口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’ 17
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CURRENT PRINCIPLES OF DENTAL SURGERYChapter2口腔外科手術の基本を知る口腔外科手術の基本を知る 2016年4月の歯科診療報酬改定により「J045 口蓋隆起形成術:2,040点」「J046 下顎隆起形成術:1,700点」(注:両側同時に行った場合は,所定点数の50/100に相当する点数を所定点数に加算する)について,算定要件の見直しがあった.この改定により,従来の義歯の装着に際して著しい障害となる場合に加えて,咀嚼または発音に際して著しい障害となる場合も算定できることになったので,今回,その手術手技と保険算定要件,カルテ記載事項などについて解説する.骨隆起と構音障害との関連 局所に限局して骨が非腫瘍性に過剰発育したもので,口蓋部,下顎骨小臼歯部舌側に好発し,病理組織学的には緻密な層板骨からなる.その発生原因は不明であるが,その好発部位から,歯ぎしりや過剰な咬合力などの外力刺激に対する抗張力反応とも考えられており,小児期にみられることは少なく,思春期以降に増殖してみられることが多い. 口蓋隆起は,硬口蓋正中縫合部にほぼ左右対称に限局性にみられる(図1,2).義歯装着の障害になり,被覆粘膜が薄いため食物などの接触性刺激により表面に潰瘍を形成することがある.また,舌運動障害と関連し,構音障害の原因になる場合がある.この構音障害は,口蓋隆起が前方に位置すると歯音・歯茎音に歪みが生じ,後方に存在すると硬・軟口蓋化音となって歪みが生じると言われている(コラム参照).佐藤貴子/外木守雄日本大学歯学部口腔外科学講座口腔外科学分野連絡先:〒101‐8310 東京都千代田区神田駿河台1‐8‐13Takako Sato, Morio TonogiDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Nihon University, School of Dentistryaddress : 1-8-13, Kandasurugadai, Chiyoda-ku, Tokyo 101-8310骨隆起の除去コラム 口蓋隆起による構音障害歯音・歯茎音の歪み 歯音・歯茎音とは,構音点が歯・歯茎にある音で,舌尖部で構音されるサ行,ザ行,タ行,ダ行がこれにあたる.口蓋隆起が前方にあるとこれに歪みを生じ,サ行は“ヒ”に近い音,タ行は“カ”に近い音で聴取される.硬・軟口蓋化音の歪み 口蓋隆起が後方にあると,舌が口蓋に接して口腔側が閉じて,鼻腔で音を作るため開鼻声となり“ウン”が“クン”に近い音で聴取される.このとき,鼻をつまむと音を作ることができない.「イ列」「ウ列」でみられる.Excision of Palatine and Mandibular Torus148

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