粘着歯学のための重要13キーワード ベスト240論文
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講演や雑誌でよく見る、あの分類および文献解説者コメント:象牙質接着能向上のため、近年の接着材は酸性度が低くなっている。このことにより脱灰した象牙質(コラーゲン)へのレジン浸透部位(樹脂含浸層)は以前に比べて非常に薄く、ナノレベルになっている。また、スミヤー層も残存しており、残存スミヤーにレジンが浸透し“レジン・スミヤー複合体”を形成している。エナメル質接着は接着材のマイルド化の影響を受け、エナメル小柱間質へのレジン浸透(レジンタグ)の量は減少しており、レジン・スミヤー複合体も確認される。歯質表面にスミヤー層が残っていても、レジン・スミヤー複合体が形成され、その下層の歯質へレジンが浸透していれば臨床的に問題がないと考えられている。しかしながら、間接法における仮封材や仮着材のような接着阻害因子(本書162ページ参照)が存在する場合は、大きな問題となり得る。したがって、現代のマイルドタイプ接着材は、接着阻害因子の影響を強く受けるため、可及的に取り除く必要性が高くなっていることを念頭に置く必要がある。ウルトラマイルドと呼ばれている酸性度の低いアドヒーシブが普及していることにより、エナメル質接着はよりクリティカルになっている。 Mineら3によると、クリアフィル トライエスボンド(クラレノリタケデンタル、pH 2.7)と3種のエナメル質(非切削面、研磨面、バー切削面)との界面を高分解度能の透過電子顕微鏡により観察した結果、エナメルスミヤーは厚みだけでなく、その粒子の大きさも表面調整法により異なることが明らかとなった。脱灰切片観察により、アドヒーシブの浸透はバー切削エナメル質に存在するマイクロクラックにより浸透することが明らかとなった。形成方法はスミヤー層の質に確実に影響し、臨床で用いられるバー切削面と比べて実験で用いられる研磨面は均質で高密度である。酸性度の低いアドヒーシブと3種のエナメル質との界面 (出典3より引用改変して作成)。リン酸処理エナメル質リン酸処理によりスミヤーとエナメル小柱間質が脱灰され、スミヤーやバー切削面のクラックも確認されなくなる。その結果、非切削面、研磨面、バー切削面の違いはなくなる。脱灰されにくいエナメル結晶も外周が脱灰され、残存エナメル結晶の形態は変化し細くなる。アドヒーシブレジンタグ非切削エナメル質表面の耐酸性が高いことからマイルドな酸では脱灰が不十分であり、接着材の浸透は300 nm程度である。研磨面スミヤーの粒子は20 nmと小さく、スミヤー層の厚みは均質である。接着材の浸透は少なくても500 nmあり、1µm以上浸透している部分もある。アドヒーシブエナメル質無構造層アドヒーシブスミヤーバー切削面スミヤーは粒子径においても厚みにおいてもバラエティーに富んでいる。レジンの浸透も1部位による差があり、100 nmから1µmである。エナメル質内にクラック(白矢印)が認められ、その中に接着材が浸透している。 アドヒーシブクラックスミヤー157

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