MTA全書
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MTAの化学的特性19ポルトランドセメント ポルトランドセメントの歴史は1800年代の前半~中頃の英国でアスプディン家がセメントの製造に携わった頃に遡るとされる.ポルトランドセメントという名前は,イングランド南西部ドーセットにあるポートランド島(Isle of Portland)で産出されるポルトランド石と呼ばれる石灰岩に似ていることから名付けられた.今日では,コンクリートや漆喰,モルタルに使われているきわめて一般的な水硬性セメントである.ASTMインターナショナル(前米国材料試験協会)によるとポルトランドセメントは10種類(ASTM Standard C150/C150M - 122012)あるとされるが,MTAに使われているポルトランドセメントはⅠ型のポルトランドセメントのみに制限されている.ポルトランドセメントの成分比は厳密には決まっておらず,成分の割合のばらつきが許容されている.さらに,さまざまな製造業者がそれぞれに調達する原材料の種類や製造方法の違いも想定されることから,MTAとポルトランドセメントを比較する研究報告を考察する際には,この点に注意すべきである. 通常のポルトランドセメントの製造工程は,原材料(石灰岩や炭酸カルシウム,粘土などがよく使われる)を調達し,それぞれの原材料を砕いて粒子の大きさを細かく整ったものにすることから始まる.次に,細かくなった原材料を特定の割合で混ぜてさらに砕き,合成して円筒状の回転釜に入れ,1,430~Fig.2.2 gray MTAとwhite MTAの粉末.(James Brozek先生のご厚意による)

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