MTA全書
3/6

80MTA全書 直接覆髄で水酸化カルシウムと比較した場合,MTAの長所は溶解性が低いこと,機械的強度が高いこと,象牙質への辺縁封鎖性が圧倒的に優れていることである(Sarkarら 2005).さらにいえば,直接覆髄でMTAを使えば,水酸化カルシウムのさまざまな短所も補ってくれる.水酸化カルシウムの短所には,覆髄材として吸収されること,機械的安定性がないこと,漏洩に起因する長期封鎖性が欠落していることなどがある(Dammaschkeら 2010c).MTAは水硬性かつ吸湿性のセメントであるので,血液や組織液があれば硬化することができる(Torabinejadら 1995a). ケイ酸カルシウムセメントは,MTAのように細胞や組織液に触れるとカルシウムイオンや水酸化物イオンを放出すること(Borgesら 2011)や,その表層にヒドロキシアパタイト結晶が形成されることが知られている(Sarkarら 2005;Bozemanら 2006;Gandolら 2010).アパタイトが形成されると象牙質との間の隙間が埋められるのと,象牙質と反応する過程で細管内に微小繊維状アパタイトが沈殿するため,封鎖性が高まり漏洩が減少していく(Han & Okiji 2011).このように形成された「中間層」を調べると,成分的にも構造的にもヒドロキシアパタイトと類似していることがわかった.そして,このヒドロキシアパタイトの形成こそが,生活歯髄療法におけるMTAのもっとも重要な物理化学的な特性である(Sarkarら 2005;Bozeman 2006).この特性があるおかげで微小漏洩を予防することができ,また生物学的活性があることで成長因子をもつ細胞を増加させることができ,それゆえに治療の予後を改善するのに効果的なのである(Sarkarら 2005).さらには,MTAには抗菌効果があり(Torabinejadら 1995d;Ribeiroら 2006),突然変異誘発性はなく(Ket-teringら 1995),また細胞毒性もほとんどない(Keiserら 2000).MTAは骨芽細胞の細胞形態を変えることがなく(Kohら 1998),それらの細胞を生物学的に活性化させて(Kohら 1997;Mitchellら 1999),石灰化を促していく(Abedi & Ingle 1995;Hollandら 2001). MTAが穿孔部封鎖に使われた場合,MTAは歯根膜付近でセメント芽細胞に覆われる(Hollandら 2001).しかも,ヒト骨芽細胞はMTAの表層に張り付き,増殖することが知られている(Zhuら 2000).さまざまな研究からわかったことは,MTAは細菌の侵入に対して信じられないほど優れた封鎖性を有する(Torabinejadら 1993,1995e;Torabinejad & Chivian 1999)と同時に,非常に高い生体親和性ももち合わせているということである(Torabinejadら 1995b;Pitt Fordら 1996;Kohら 1997;Torabinejad & Chivian 1999;Keiserら 2000).結論として,MTAは直接覆髄には最適な材料であり,生活歯髄療法で水酸化カルシウムに代わる材料として推奨できるものである(Hollandら 2001;Choら 2013)(Fig.4.5).

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る