MTA全書
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262MTA全書 MTAの利点と欠点は,Table 9.3にまとめてあるので参照いただきたい.逆根管充填材としてのMTA細胞毒性と生体親和性 根尖周囲の歯周組織に接触する逆根管充填材で考慮すべきもっとも重要な特性は,細胞毒性と生体親和性である.MTAが生体親和性を有していることは重要で,逆根管充填材として使用すると骨の再生を含めて根尖歯周組織の治癒を促進させられる環境にすることができる. 逆根管充填材の細胞毒性については,ミトコンドリア脱水酵素の活動性を調べる細胞生存率測定法や寒天重層法,そして充填材に付着した細胞とその形態の調査などの多様な方法で評価されている.また,MTAの細胞毒性と生体親和性については,in vitroの細胞培養でも研究されているが,MTA上に骨芽細胞や歯周組織の細胞が炎症なく良好に付着しているのが確認されている.数多くの研究により,MTAはアマルガム,ZOE, IRM, コンポジットレジン,グラスアイオノマーセメントなどの逆根管充填材と比較して,細胞毒性は低いか同程度であることが示されている(Zhuら 2000;Balto 2004;Yoshimineら 2007;Bodrumlu 2008). あらかじめ混和されているMTAを逆根管充填材として使用した場合の神経や神経細胞への毒性に関して,神経を損傷させたり神経再生を抑制したりするような作用があるのかが調べられている.いくつかの逆根管充填材の神経毒性が調べられているが,アマルガムとSuperEBAそしてDiaketを使用した場合は神経細胞は死滅してしまったが,MTAの場合はそうではなかった(As-rari & Lobner 2003). もっとも初期に行われたMTAの毒性に関する研究では,あらかじめ混和されているMTAが使用されていた.その理由は,混和してすぐのMTAは硬化時にpH値の上昇があるため,細胞にとって有害な環境を作り出してしまうと思われていたためである(Balto 2004).細胞培養で生じた阻止帯は,混和してすぐのMTAに近づくに従い強くなっていた.しかし,この無細胞帯は一時的なものであるように思える(Fig.9.3A,B).混和してすぐのMTAが生体内に挿入されても,無細胞帯が出現したとの報告はない(Pitt Fordら 1996;Apaydinら 2004).MTAおよびアマルガム,SuperEBAの毒性を測定したところ,これらのなかでは混和してすぐのMTAがもっとも毒性が低かった.MTAを逆根管充填材として使用したときに硬化する前に生じる初期の毒性は,根尖歯周組織に悪影響を及ぼすことはないと考えられる(Lustmannら 1991).

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