MTA全書
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MTAを用いた逆根管充填263 生体親和性とは,ある材料を宿主側との間で特定の役割を果たすために用いたとき,宿主側より良好な反応が得られることである(Willians 1986).いくつかのin vivoでの動物実験では,MTAには歯周組織に対して悪影響のある作用はまったくなかったことが報告されている(Chong & Pitt Ford 2005;Torabinejadら 1995c;Baekら 2005).MTAを実験動物の骨内に埋め込んだところ炎症が生じなかったばかりか,ほとんどのケースでMTAの上に直接,骨の沈着が観察された(Saidonら 2003).イヌの歯に根尖切除術を行い,4か月後に新たに再生された骨と3種類の逆根管充填材の間の平均的な距離が測定された.MTAと新たに再生された骨との距離は,正常な歯根膜腔の平均値と同様であった.そしてSuperEBAおよびアマルガムでの場合と比べてその平均的な距離は短かかった(Fig.9.4)(Baekら 2010).これらの研究結果から,MTAを用いれば骨や歯根膜を再生するために良好な環境を築けることが示唆Fig.9.3 位相差顕微鏡と走査型電子顕微鏡(SEM)画像により,WMTAを混和後48時間(A)と72時間(B〜D)でのヒト歯根膜(PDL)細胞の成長度合いを示す.(A)白矢印はMTAの辺縁部と細胞の間にできた無細胞帯を示す.(B)72時間後には,MTAと細胞の間に無細胞帯はみられなくなった.(C)MTAの上に細胞を乗せると細胞はMTA上に付着して健全な状態で成長した(倍率:200倍).(D)MTA上の細胞を高倍率で撮影した(倍率:2,000倍).(A)MTAMTA(B)(C)(D)

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