日本外傷歯科学会学術用語集
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390. 膿瘍切開 (のうようせっかい)abscess incision, incision of abscess真皮または皮下組織,粘膜下組織内に化膿を生じ,膿汁の貯留したものをメスなどによって切開すること.小さな膿瘍では特に治療を行わなくても自然に消失したり,表皮が破れて排膿したりすることがあるが,疼痛や腫脹が強い場合には切開して排膿させる.口腔内での膿瘍切開では,審美性に配慮するよりも排膿が十分にできるように膿腔を開放することを原則とする.一般に切開線は歯列に平行とし,膿瘍の下方に設定して自然排膿できるようにする.メスは骨面に対して直角に当てて切開する.口腔内では尖刃刀(No.11),小円刃刀(No.15)が多く用いられる.は391. 歯 (は)tooth歯胚から形成され,咬合,咀嚼,構音,審美機能などを有する硬組織.外胚葉組織からエナメル質が作られ,外胚葉から誘導された外胚葉性間葉組織から象牙質,歯髄,セメント質が形成される.ヒト永久歯には,前歯(中切歯,側切歯),犬歯,小臼歯(第一,第二小臼歯),大臼歯(第一,第二大臼歯,第三大臼歯〔智歯〕)がある.智歯には欠損や埋伏がみられることが少なくない.ヒト乳歯には,乳前歯(乳中切歯,乳側切歯),乳犬歯,乳臼歯(第一,第二乳臼歯)があり,歯数は永久歯32本,乳歯20本が基本型である.392. バイタルサイン (ばいたるさいん)vital sign(類義語・関連語)意識障害人間が生きているか否かを示す最も基本的な徴候.意識,呼吸,体温,血圧,脈拍などをさす.急病や事故直後などでは,意識状態の確認が重要である.声を掛けながら,先ず意識状態を把握し,その後に呼吸状態などを確認する.393. 排膿 (はいのう)drainage, pus discharge(類義語・関連語)膿瘍切開炎症部位に形成された膿瘍から膿性滲出液が排出されること.口腔内に形成される内歯瘻や顔面皮膚面に形成される外歯瘻において認められる.膿瘍が自潰または切開により排出されると症状は軽快し,慢性炎へと移行する.394. ハイブリッド型〔コンポジット〕レジン (はいぶりっどがた〔こんぽじっと〕れじん)hybrid resin composite, hybrid type resin composite(類義語・関連語)コンポジットレジン,レジン粒子サイズの異なる無機質フィラー(マクロフィラー,マイクロフィラー)と有機質複合フィラーを配合したコンポジットレジン.広範なフィラーの粒度分布を有し,充塡率を高めることで,機械的諸性質,研磨性,表面滑沢性,光沢度を向上させた.現在では,更に超微粒子フィラーを配合し,充塡率を高めた高密度充塡型が多く使用されている. 齲窩に対する修復をはじめ,外傷歯に対しての直接修復や間接修復,前装冠修理など,その用途は多岐にわたる.395. ハイブリッドレイヤー (はいぶりっどれいやー)hybrid layer, resin-impregnated layer, hybridized dentin(同義語)樹脂含浸層,樹脂含浸象牙質(類義語・関連語)接着性レジン酸処理によって脱灰された管周・管間象牙質のコラーゲン線維層にレジン成分が浸透,硬化することにより形成されるレジンと象牙質の混合層.樹脂含浸層あるいは樹脂含浸象牙質とも呼ばれる.レジンの象牙質に対する接着機序として,ハイブリッド層の微細な機械的保持は重要な因子である.396. 白濁【エナメル質の】 (はくだく)white turbidness(類義語・関連語)後継永久歯胚,白斑実質欠損を伴わないエナメル質の白変.表層下脱灰が生じている初期エナメル質齲蝕の病変部で観察される.乳歯の根尖病変や外傷などによって後継永久歯胚が損傷され,後継歯エナメル質の石灰化不全あるいは軽度の形成不全が生じた場合にも観察される.397. 拍動痛 (はくどうつう)throbbing pain(類義語・関連語)自発痛脈を打つような激しい痛み.強い炎症などによって生じる.歯根膜期や骨内期の急性根尖性歯周炎などでみられる.398. 白斑【エナメル質の】 (はくはん)white spot(類義語・関連語)エナメル質形成不全,後継永久歯胚,白濁エナメル質でみられる白色不透明のチョーク状小斑.多くは初期エナメル質齲蝕の表徴として捉56のうようせ

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