日本外傷歯科学会学術用語集
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あかさたなはまや・らわ索引付録えられ,探針によるざらつき感が触知される.また乳歯に外傷を受け,その直下の後継永久歯胚に間接的に外力が加わった場合,エナメル質形成不全が生じ,萌出後同部に白斑が認められることがある.歯胚の歯冠部形成期における局部的な炎症性疾患やフッ化物の過剰摂取による斑状歯にも認められる.399. 破骨細胞 (はこつさいぼう)osteoclast(類義語・関連語)破歯細胞骨の吸収やリモデリングの際に出現する細胞で,血液細胞(単球)から分化するとされる.核を十数個~百個程度有する多核の巨細胞である.骨吸収の際,骨面に接して骨基質を溶解し,骨吸収窩(ハウシップ窩)を形成する.破骨細胞の細胞質にはゴルジ装置,ミトコンドリア,リソソーム,液胞などが豊富で,骨基質に面する側には多数の波状縁(rued border)が発達し,ここでプロトンポンプにより酸性環境で骨を脱灰し,溶解する.400. 破歯細胞 (はしさいぼう)odontoclast(類義語・関連語)破骨細胞歯,歯根の吸収時に出現する多核の巨細胞.生理的には歯の交換時にみられ,乳歯の歯根(セメント質,象牙質)の吸収面に多数出現する.病的には,外傷歯にしばしばみられる.セメント質や象牙質を吸収し,萌出前の歯や埋伏歯ではエナメル質の吸収もみられる.また,歯の矯正移動時に強い矯正力が加わった場合,歯根表面に吸収が生じることがある.この場合,吸収窩は後にセメント質の添加により修復される.破歯細胞の微細形態は骨を吸収する破骨細胞に類似している.吸収面に接して波状縁(rued border)を有し,この領域をプロトンポンプにより酸性環境にして歯を脱灰,溶解する.乳歯歯根吸収期における破歯細胞と破骨細胞の間には機能的な差異があるとの研究報告もあり,破歯細胞と破骨細胞の詳細な相違点については不明な点が多い.401. 破傷風 (はしょうふう)tetanus(類義語・関連語)破傷風トキソイド土壌中に棲息する嫌気性の破傷風菌(Clostridium Tetani)を病原体とする人獣共通感染症.ワクチンの普及により先進諸国での発症は少ない.発展途上国での発症は新生児破傷風が多い.創傷部が嫌気状態になると菌の芽胞が発芽し,神経毒素であるテタノスパスミン(tetanospasmin)が産生される.脳や脊髄の運動抑制ニューロンに作用し,筋肉麻痺や強直性痙攣を引き起こす.開口障害に始まり,呼吸筋の痙攣により死に至ることがある.402. 破傷風トキソイド (はしょうふうときそいど)tetanus toxoid(同義語)破傷風ワクチン(類義語・関連語)破傷風破傷風ワクチンのこと.不活化ワクチンである破傷風トキソイドによる能動免疫は,破傷風の予防に極めて有効である.小児期に三種混合ワクチンDPT(D:ジフテリア,P:百日咳,T:破傷風)を接種することで基礎免疫を完了した後,10年に1回の追加免疫が望ましい.外傷で破傷風の危険があるとき,基礎免疫がなされている場合はトキソイドの追加免疫が,未免疫の場合はトキソイド注射と破傷風ヒト免疫グロブリンの筋注がなされる.403. 破折【歯の】 (はせつ)fracture(類義語・関連語)歯冠・歯根破折,歯冠破折,歯根破折直達性もしくは介達性外力により歯質の離断がみられる歯.歯の破折は歯冠部の破折と歯根部の破折に大別できる.歯冠部の破折は,エナメル質や象牙質までの単純破折と露髄を伴う複雑破折に分けられる.歯根の破折には水平破折と垂直破折がある.水平破折は破折の位置が臨床予後に大きく影響し,歯根尖側1/3での破折は予後良好なことが多い.歯冠と歯根を含む垂直破折の場合は,修復が難しく歯肉炎から感染をきたすことが多いため予後不良例が多い.404. 破折歯 (はせつし)fractured tooth(類義語・関連語)歯冠破折,歯根破折,破折直達性もしくは介達性外力による歯質の離断がみられる歯.齲蝕により歯が脆弱な状態になった場合や,転倒などで歯に強い外力が加わった場合に起こる,歯への傷害であり,大きく歯冠破折と歯根破折に分かれる.歯冠破折の場合には,露髄の有無により処置方針が異なる.歯根破折の場合には,根の破折部位や破折方向により,そのまま温存するか抜歯を行うのか処置方針が分かれる.405. 破折片【歯の】 (はせつへん)fracture fragment(類義語・関連語)単純性歯冠破折破折によって歯から離断した歯質片.単純性歯冠破折の場合,破折片があれば再接着を試みる.この方法は審美的,機能的,組織親和性の点から有用な治療法である.破折片の接着が困難な場合,57はせつへん

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