下野先生に聞いてみた[1]
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023歯肉縁上プラークたのに対して,ブラッシングを行った群では歯肉縁下プラークの形成は見られませんでした.この結果は,「歯肉縁上プラークをコントロールすると,歯肉縁下プラークは増えない」ということを意味しています3. さらに,Waerhaugは歯肉縁下プラークがもとの状態に戻るのに1年かかることを示した研究も報告しています4(図8-2). Smulowらの研究でも,PMTC(professional mechanical tooth cleaning専門的機械的口腔清掃)による歯肉縁上プラークコントロールによって,歯肉縁下プラークの細菌数が減少することが示されています1,5(図8-3).歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラーク プラークは歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークに分けられます.両者の違いを表にまとめると表8-1のようになります. 歯肉縁上プラークを電子顕微鏡で観察すると,ペリクル(被膜)から細菌の集落が円柱状を示しながら外側に向かって広がっているのがわかります.糸状菌は歯面に対して垂直に配列し,糸状菌が球菌に覆われるようになると,いわゆるコーンコブ(トウモロコシの穂軸)が認められます. 歯周炎の歯肉縁下プラークを電子顕微鏡でみると,歯の表面近くには密なプラークが存在し,その外側には細図8-3 歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークの関係.20日間の連続したPMTCによって,歯肉縁上プラークをコントロールすると,歯肉縁下プラーク(歯周ポケット内細菌)が減少することを証明した実験結果をまとめたグラフである.歯周ポケット内の細菌を増殖させないためには.歯肉縁上のプラークをしっかりコントロールすることが大切である5.*参考文献1より引用・改変表8-1 歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークの違い.歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークの臨床的特徴と,構成する細菌をまとめた.*参考文献5より引用表8-2 歯周病原菌.臨床的特徴構成する細菌歯肉縁上プラーク歯肉縁よりも歯冠側にあり,染め出し液で赤く染め出される.レンサ球菌,放線菌,グラム陽性桿菌歯肉縁下プラーク歯肉縁より歯根側(歯周ポケットの内)にあり,外から見えない.歯周ポケット内でバイオフィルムを形成する.グラム陰性嫌気性球菌,スピロヘータ,および桿菌.歯周病原菌(表8-2)とよばれる特定の細菌群が存在する.① Porphyromonas gingivalis ポルフィロモナス・ジンジバリス② Aggregatibacter actinomycemcomitans アグレガティバクター・アクチノミセテムコミタンス③ Tannerella forsythis タンネレラ・フォーサイシス④ Prevotella intermedia プレボテラ・インターメディア⑤ Treponema denticola トレポネーマ・デンティコラ⑥ Fusobacterium nucleatum フゾバクテリウム・ヌクレアタム⑦ Campylobacter rectus カンピロバクター・レクタスグループ1グループ2グループ3グループ4初期処置のPMTC歯肉縁上プラーク歯肉縁下プラーク歯肉縁上プラーク歯肉縁上プラーク歯肉縁下プラーク無処置初期処置後のPMTC歯肉縁上プラーク歯肉縁上プラーク無処置無処置増加           減少歯周ポケット内細菌数:顕微鏡で算定されるスピロヘータ数:総嫌気培養菌数101

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