歯内療法成功のためのコーンビームCT活用法
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Chapter 991021本の透過像として見られる.もしエックス線ビームが破折線から15~20°の範囲内でずれた場合,エックス線写真では破折線像がより楕円状になって見える(図9-4,9-5).それよりさらにエックス線ビームがずれた場合,破折線像は不明瞭になっていく14.なおこれらは1本の横断する破折線が存在する場合の所見であり,複数の歯根破折の場合ではエックス線写真上に不規則な線として確認できる14.破折線の走行は多種多様であるが,一般的に見られるのは傾斜破折(根尖部または歯根中央部での破折に多い)や,水平破折(歯頚側1/3部の歯根破折に多い)である.したがって,検査時には歯軸に90°の角度で口内法エックス線写真を撮影すると水平歯根破折の検出に有効であり,また咬合撮影法は傾斜破折の検出に有効である.つまり,歯根破折の診断には数回のエックス線写真撮影が必要となる25, 31.しかし破折部分が近接して並んでいる場合は,エックス線写真撮影を数回行っても受傷からすぐに歯根破折を検出できるとは限らない.後日のエックス線写真検査で改めて発見できることがある.これは,破断部や隣接歯槽骨内に生じた出血や肉芽組織の形成により,破折片の分離が引き起こされるためであろう7.aebfcdhg図 9-2  歯冠・歯根破折.a, b:12歳男子.受傷1時間後の唇側,口蓋側面観の口腔内写真.c:口内法エックス線写真.1歯頚部に明瞭な破折線が見られる.d:1のCBCT矢状断像.歯冠部歯髄を横切り,口蓋側の骨縁下歯根表面に続く斜めの歯冠・歯根破折線が見られる(赤矢印).治療としては,歯根残存部分をいったん抜歯し,唇口蓋側の歯肉縁上に健全歯質が露出するように180°回転させてから再植した(外科的挺出).歯冠部歯質は外科的挺出から3週間後にコンポジットレジンを用いて再接着した.e, f:3年後の口腔内写真.g, h:受傷3年後の口内法エックス線写真と1のCBCT矢状断像.異常は見られない.

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