新版 歯科矯正学事典
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138ケイヒイテケット用の金属製ピン類は使用せず,エッジワイズブラケットで使用する高分子製のモジュールを使用し,ワイヤーサイズによりパッシブからアクティブライゲーションまで調節できるように設定してある. またダブルスロットにバーティカルスロットが組み合わせたられたおかげで,初心者や通法で治療可能な症例にはストレートエッジワイズのような使用方法で対処し,屈曲が必要な症例や上級者が応用を利かせたいときには,どのような応用でもできるように設計されている.ジルコニアブラケット.メタルブラケット. KBTマルチブラケットシステム KBT multibracket system KBTマルチブラケットシステムは,ベッグ法の流れを引き継いだ最新の改良型ベッグ法である.このシステムは,ベッグ法のみならず,スタンダードおよびストレートエッジワイズ,ティップエッジ法,リンガル法やそれに付随したさまざまなブラケットやチューブを研究したうえで開発されたものであり,歯や骨格の華奢な日本人(東洋人)に最適化したシステムである. 開発から販売まで,11年の歳月がかかっている.そのコンセプトは「すべては患者さんのために」というもので,「引き算」の矯正治療を目指し必要ないものは極力排除し,シンプルで生体に優しいシステムとなっている.ミニマムペイシェントコンプライアンスはミニマムドクター/スタッフコンプライアンスのうえにしか成り立たないという発想に成り立ち,患者が楽なだけでなく,ドクターやスタッフへの労力,精神的および経済的負担も少ないように,装置および方法が設計されている.これはバックミンスター・フラー(Bukminster Fuller)のダイマクション(Dymaxion:製品が人間の生活環境を改善するという概念)のフィロソフィーに通じるものである.さらに生体に優しいという意味で,Form follows function(機能は形態に先んじる)もフィロソフィーの1つとなっている.そのため治療過程の多くは,超弾性のニッケルチタンワイヤーを使用し,患者の機能を損なわない治療ができる.また,ブラックトライアングルや歯根吸収が最小になるように設計されている.ワイヤーとの摩擦もそのサイズとモジュールの組み合わせで術者が設定できるようになっている.【使用ブラケット】 KBTブラケット(1種類,材質が2種類:ステンレススチールと酸化ジルコニウム)とKBTチューブ(1種類),小臼歯部はステンレスブラケットを推奨.⇨KBTブラケット, KBTチューブ【ポジショニング】 基本はFAポイント(歯冠の中央の点とブラケット/チューブの中央が一致,歯が並んだときの咬合平面とスロットが平行)になる.そのためポジショニングゲージを必要としない.犬歯部のみ0.5mm切端寄り.このことにより,装置接着時のチェアータイムの短縮ができる.慣れると片顎に装置を装着するのに要する時間は15分程度である.また歯の形状や咬合状態などによりどうしても合わない部分や術者の不注意によりポジショニングが不適切な部位になってしまった場合は,その部位について治療中,移動が可能になったとき,もしくは気がついたときにポジショニングを適切な位置に変更すれば良い.【咬合平面のゆがみを治療した症例(MTM・その他)】 (次頁の図参照)【使用ワイヤー】 使用できる物理的なワイヤーサイズは.014”~ .018”(ワイヤーによっては.019”)×.025”までである.このシステムで使用するスタンダードなワイヤーは,.016”φNi-Ti→.016”×.016”Ni-Ti→.016”×.022”Ni-Tiまたは.016”×.022”ステンレスワイヤーとなっている.そのため,使用するワイヤーの種類も3~4種類で治療が終了する. 非抜歯の場合は特殊な症例を除いては,すべてNi-Tiワイヤーで終了することも可能である.抜歯症例の場合は,少なくともエラスティックを使用する期間はステンレスワイヤーを使用する.この場合,通常は.016”×.022”を使用するが,.018”×.018”を使用しても良い.また,咬合挙上が必要な場合は,スピーの彎曲が付与されたワイヤーを用いる.【基本手順】 基本的な手技の流れは,ほかのシステムと変わ

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