生涯歯を残せる時代の5つのスキル
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第4章 失活歯治療184  1本目圧排のポイントは、①圧排糸が浮かないようにする(下を這わせる、押し込みながら行う、糸の延び縮みを意識する)ことと、②歯肉溝の頸部に沿わせる(這うように1周させる)ことである。圧排糸挿入時に糸を意図的にねじらないようにする(結果的には、ねじれる)。頬側や叢生部など歯肉が薄くて歯肉溝のスペースがとれないところは、糸が浮きやすい。圧排糸を歯肉溝底部に密着させるつもりで、絶対に浮かさないように注意する。挿入時間は10分以内を目安とし、組織の破壊を防ぐため、圧排糸挿入時間が30分以内とすること(複数本の場合は60分程度まで長引くが止むをえない)。知っておこう!二重歯肉圧排法(ダブルコードテクニック)を推奨する理由 二次圧排糸の太さでマージンに歯肉が被らないため、確実な印象採得ができる。また、歯肉溝浸出液や出血のコントロールにも役立つ。2本の圧排糸は印象採得後すぐに撤去することで歯内縁が元の位置に戻るため、付着歯肉が薄く幅が狭い症例でなければ歯肉形態損傷の心配はない。「個歯トレー法」に比べ圧排の手間や時間がかかる等のデメリットはあるが、歯肉とマージン間を確実に離せるので筆者は本法を推奨する。注意しよう!糸は決して押し込まない 圧排糸が入らないときに力が足りないと思い、力任せに押し込もうとするのは正しくない。ポケット底部の組織を破壊し、出血したり、後になって歯肉腫脹の原因になる。1本目の圧排の手順a~c:近心からスタートし、順次一周させる。糸をそのまま入れたら歯肉を巻き込んでしまうため、歯肉を少し押し広げるようにしながら入れる。ゆるい歯肉溝に糸を置くときは平頭充填器を、糸の向きや力を意図的に変えたいときはスプーンエキスカを使うとよい。d:糸は浮かないように注意する。1か所でも浮いたところがあると、すぐに上がってきて元に戻ってしまう。f:1本目の圧排が終了した状態。黒糸は浮き上がりがなく、マージンラインより下のポケット内に隠れている。e:余った糸は外科用ハサミでカットする。abcdef➡➡➡➡ 1本目の圧排を行う3手 順

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