GPとDHのためのぺリオドントロジー2
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さまざまなバイオフィルム図1 世の中にはさまざまなバイオフィルムが存在する(左からキッチン排水口,配管パイプ内部,川の岩,コンタクト,カテーテル). CHAPTER1でも示したようにPageらによって加えられた1997年モデル1では中央の4つのボックス間を左右に行き来するだけの単純な一方通行あるいは往復ではない,歯周病原細菌の存在が自動的に1つの宿主反応パターンを引き起こし重篤な破壊をもたらすものではないことを説明した.この宿主反応には幅があり,この幅は遺伝的・先天的や環境的・後天的リスクファクターによって第一に決定さ 一般的にバイオフィルムはジメジメした湿気た表面に構築される.キッチンや配管パイプのヌメリ,川流れの中の岩の表面などが身近なものとして連想されるが,人体ではコンタクトレンズ,カテーテル,人工喉頭,人工股関節などに形成される微生物による構造体である(図1).人体においては口腔内ほどバイオフィルムの形成に適した環境はない.湿度,温度,栄養素,生着できる表面などあらゆる条件がバイオフィルムの成長に最適である. では口腔内における細菌性プラークとバイオフィルムはどう違うのだろうか? ブラッシングを行い歯の表面の細菌が付着していない状態になるとすぐに唾液由来のたんぱく質からペリクルが形成され,その表面に浮遊している細菌が歯の表面に物理的に付着する(図2-①).皮膚,歯肉などの上皮が剥離するものには細菌は付着せずに,低剥離性の硬組織れる1〜3.しかしながら,臨床的には細菌性プラーク(バイオフィルム)の破壊と除去が第一手段で,疾病予防への最大の効果につながることは過去のさまざまなエビデンスが示唆しており4〜8,われわれ歯科医師・歯科衛生士は入口である細菌性プラークへの十分な理解,またそれに関係するファクターへの対策を十分に講じる必要がある.である歯の表面,修復物にのみ長期生存が可能になる.ルートプレーニングで根面を滑沢にしたり,よく研磨された修復補綴物を歯に装着するのは,剥離性を向上させ細菌が付着しにくくするためである. その付着(図2-②)を繰り返して数時間程度放置された細菌の集積はいわゆる細菌性プラークであり(図2-③),まだバイオフィルムのステージまでは発展はしていない.しかしそれらの付着した細菌を放置しておくと,細菌がコロニー化し菌体外多糖(グリコカリックス)と呼ばれる細菌集合体の屋台骨を自身で生成する(図2-④).この段階から細菌性プラークをバイオフィルムと呼ぶ.基本的には,細菌性プラークが病原性を発揮するにはバイオフィルムを形成する段階まで待つ必要があるために,一般的に細菌性プラークとバイオフィルムは同義語として使われることが多い.1細菌性プラーク(バイオフィルム)について理解しよう!1バイオフィルムって何? プレイバックアゲイン34

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