GPとDHのためのぺリオドントロジー2
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 歯周病と全身疾患の関連性は2000年以降,歯科界の内外で大きな注目を集めてきた.タイム誌の2004年2月号に「静かなる殺戮者(secret killer)」1の見出しで “炎症性疾患と心臓発作,がん,アルツハイマー病,その他の疾患との驚くべき関係.私たちが立ち向かうためにできること”と題し,歯周病に端を発する局所炎症が全身に及ぼす可能性を特集した. 日常生活における炎症というと,身近なところでは過度な日焼けや皮膚感染による腫れなどをイメー 歯周炎と全身疾患の関連性には,以下の5つの質問に対する解釈が必要である.1)歯周炎が対象疾患を増悪させる要因であるのか?2)対象疾患が存在することにより歯周炎が増悪するのか?3)1)の答えがイエスなら歯周炎を治療することにより全身疾患は改善するのか?4)2)の答えがイエスなら対象疾患を治療することで歯周炎の寛解につながるのか?5)歯周炎をコントロールして全身疾患に影響を良い方向にもたらすことで医療費の減少につながるか? 多くの疾患において1)〜4)の現段階での答えはその中間に位置するもので,数多くのエビデンスがその関係性を示しているものの,1:1の関係であることはなく,多くの要因が複雑に絡み合っていると考えられる.もっともアップデートされた厳密ジする.しかし本当に気をつけなければいけないのは,本来炎症性疾患であるにもかかわらず一般的にそうでないと認識されている疾病である.皮膚が老化してシワができるが,じつはこれもほとんどが皮膚の炎症の結果によるものである.一般的には歯周病も単なる感染症とみなされるきらいがあるが,その本体は感染という外的ストレスに対する生体の炎症反応である.「炎症」という視点に立てば,歯周病も立派な全身疾患の1つである.なエビデンスの解釈はAAP(米国歯周病学会)とEFP(ヨーロッパ歯周病連盟)の合同コンセンサス2~17,日本歯周病学会の「歯周病と全身疾患」18,日本臨床歯周病学会の「歯周病と全身疾患 最新エビデンスに基づくコンセンサス」19にゆずるものとし,そのなかでも歯周病との強い関係性が示唆される以下の7つの疾患に関して,どのようなメカニズムでリンクしていると想定されているのか,それを踏まえてどのように臨床に生かしていくかを考察する. 本稿では一般的に歯周病との関連性が疑わしいといわれてきた代表的な炎症性の全身疾患にフォーカスを当てていく(図1).①糖尿病(⇨P120に解説)②肥満・メタボリックシンドローム(⇨P125に解説)③アテローム性動脈硬化(⇨P128に解説)④周産期合併症(⇨P131に解説)⑤肺炎(⇨P134に解説)⑥腎臓病(⇨P136に解説)⑦関節リウマチ(⇨P138に解説)1「炎症」という視点から歯周病をみてみよう2歯周炎と全身疾患の関連性118

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