ゼロからわかる 小児う蝕予防の最前線
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2. う蝕のしくみと  スクロースのかかわりグルカンが形成される3酵素GTFが、分解したグルコースを鎖状につなげていく。あまったフルクトースは、ミュータンスレンサ球菌や他の細菌のえさとなる。グルコースが長くつながると「グルカン」となり、ミュータンスレンサ球菌は歯面に強く付着する。グルカン中のグルコースは、菌の非常食としても機能する。菌の身を守り、非常食ともなるグルカンは、童話『ヘンゼルとグレーテル』の「お菓子の家」に似ている。スクロース(砂糖)が摂取される1飲食により、スクロースが口腔内に取り込まれる。スクロースはグルコース(G)とフルクトース(F)が一分子ずつ結合したもの。スクロースがグルコースとフルクトースに分解される2ミュータンスレンサ球菌の酵素GTFが、スクロースをグルコースとフルクトースに分解する。その一方で、菌はグルコースやフルクトースを代謝して酸をつくり出す。スクロースを材料に酵素GTFがグルカンをつくる ミュータンスレンサ球菌は、グルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase, GTF)という酵素を産生します。GTFはスクロースを基質(材料)として、スクロースをグルコースとフルクトースに加水分解し、得られたグルコースを鎖状につなげ、「グルカン」という特殊な多糖を形成します。 このグルカンは、水に溶けず、歯面に粘着性があるのが特徴で、これがプラークバイオフィルムの基礎になります。粘着性グルカンの歯面への付着は非常に強力で、歯面のバイオフィルムはうがい程度では取れず、除去にはブラッシングが必要不可欠です。 グルカンはグルコースが鎖状につながったものですが、不思議なことに、GTFはグルコースから直接グルカンをつくることはできず、スクロースからしかつくれません。※多糖の命名法では、構成する糖の名前の末尾に"an"をつけることになっている。グルコースの場合は、glucose(グルコース)+an=glucan(グルカン) となる。スクロース酵素GTF歯面グルカン酸312酸40

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