Digital Dentistry YEARBOOK 2018
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19口腔内スキャナーがもたらす補綴ワークフローの変化と将来展望図1a、b 陶材焼付インプラント上部構造の製作過程の例。a:鋳造されたフレームワークの一部。大型補綴装置では一塊の鋳造は困難である。b:鋳造された3ピースのフレームワークを固定し、ろう付けを行う。近年のデジタル制御工学・情報工学の加速度的な発展は、さまざまな面で国民生活にインパクトを与えてきた。今や大多数の国民にとってパーソナルコンピューターやスマートフォンは生活必須アイテムであり、デジタル技術なくして日常生活は成り立たないと言っても過言ではない。医療の進歩においてもデジタル技術は中核的な役割を担ってきたが、歯科も例外ではない。デジタル技術を用いたイノベーション、すなわちデジタルデンティストリーは、歯科医療技術の向上だけでなく歯科医療のワークフローを根本的に変えた1。デジタル化とはアナログデータをサンプリング・量子化してコンピューターで処理できるデータ形式に変換する作業である。アナログデータと比較して、デジタルデータは通信・共有・保存・処理・再現性などの点で有利であり、歯科医療においては①医療情報の可視化、②医療情報の共有・蓄積の利便性の向上、③各種医療情報の統合利用、④治療精度の向上、などに大きく貢献してきた2。本稿ではデジタルデンティストリーの推進において中心的役割を担う口腔内スキャナーの意義と今後の展開について考察する。はじめにはじめにCAD/CAMによる技工ワークフローのデジタル化CAD/CAMによる技工ワークフローのデジタル化補綴装置製作における標準的なワークフローは、長らく間接法を用いたロストワックス法であった。ロストワックス法の一連の工程は今日までにさまざまな改良が行われ、高い精度での補綴装置製作が実現されているが、作業工程が多く技術的な煩雑さもあいまって、製作される装置のクオリティが歯科技工士や歯科医師の熟練度や経験に左右されるという点も否めない。また、症例によってはロングスパンの補綴装置のように、ワックスアップのひずみ、埋没・鋳造にともなう寸法変化などの影響を補償するために、2〜3ピースに分割された構造を鋳造し、口腔内で位置決めした後に、ろう付けにより連結するなどの対応が必要である(図1)。CAD/CAM(Computer Aided Design and Computer Aided Manufacturing)の歯科導入のもっとも重要な意義は、作業用模型製作以降の技工ワークフローが完全にデジタル化されたことである。技工ワークフローのデジタル化は作業効率の飛躍的な向上をもたらしたが、それにともない補綴装置の製作精度の向上にも大きく寄与していab

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