マイクロデンティストリー YEARBOOK2018
5/6

別冊the Quintessence 「マイクロデンティストリー YEARBOOK 2018」PART2 マイクロスコープup-to-date特集270根管口の探索と根管形態への対応 根管の見落としが患歯の予後に及ぼす影響は大きく,根管口の探索はまさに良好な予後成績を収めるための「入り口」となる.やや以前のデータであるが,米国で2007年に2,340名の専門医(回答者1,091名)を対象として行われたアンケート調査2では,非外科的歯内療法におけるマイクロスコープの用途として根管口の探索がもっとも高い頻度で挙げられており,マイクロスコープによる視覚強化が根管の発見にきわめて有効であることが示唆される.見失われた根管口が顕微鏡観察でただちに見出される場合もあるが,石灰化物やコア材などで根管口が覆われている症例では,超音波チップや小型のバーなどで選択的な削除を繰り返すことにより,不要な切削を最小限としながら根管口を確認することが期待される(図2). とりわけ,マイクロスコープが上顎大臼歯近心頬側第二根管(MB2)の確認に有用であることは周知のとおりである.これはMB2の発見率がマイクロスコープ使用下で飛躍的に高まるとの報告3,4から,客観的に支持される.図3はMB2がマイクロスコープ下でただちに発見されたものの,主根管が石灰化物に覆われて確認が困難であったという意味で,一般的といえない症例である. また近年では,下顎大臼歯近心根における「近心中央根管(middle mesial canal:以下,MM根管と略)」(図4)の存在が注目されており,臨床的に下顎第一・第二大臼歯75例中15例(20%)で穿通可能なMM根管が確認されたとの報告もみられる5.この報告では当然ながらマイクロスコープ下で根管の探索が行われており,その有用性が示唆される. 一方,根管系がイスムス,フィン,側枝といった器具操作の及びがたい複雑な形態を有することは周知の事実である.また,多くの歯種で根管の横断面が楕円形を呈するが6,この場合,高い頻度で根管に非切削領域が生じることが知られている.たとえ図1a O・Kマイクロエキスカ.先端形態はスプーンエキスカベーター様.図1b GPリムーバースピアー.先端に円錐形の「やじり」様形態が付与されている.図1a図1bマイクロスコープ用小型器具表1 マイクロエンドドンティクスの有効性が期待される処置.①根管口の探索②根管内異物(ポスト,破折器具など)の除去③根管充填材除去④根管形態や不規則な根管内構造(イスムス,分岐,内部吸収など)の確認⑤根管の機械的清掃と清掃状態の確認⑥歯根の亀裂,破折の診断⑦穿孔の診断と封鎖⑧外科的歯内療法(とくに根尖切除,逆根管充填)

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る