はじめての顕微鏡 マイクロスコープが「見える」「使える」ようになる本
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[コラム]1机の上に本を広げて文字を観察する.2大きく動かす前にいったん倍率を下げる.3隣のページまで大きく顕微鏡を動かす.4倍率を上げて文字を観察する. 前項は全体として,動かない視界の中で観察対象だけが動くことに慣れるためのトレーニングだったが,ここでは視界全体が動くことに慣れるのを目的としたトレーニングをする.これは,治療部位を大きく変える際の動作を想定している.視界全体が動くため顕微鏡酔いが生じやすいので,くれぐれも無理をしないように少しづつ練習しよう.2視界全体が大きく動くことに慣れよう■“顕微鏡酔い”を克服するトレーニング■“顕微鏡酔い”とは 顕微鏡を使っていると「乗り物酔い」をしたように気分が悪くなることがある.これは,乗り物酔いと同様に高速で移動しながら加減速,揺れなどが繰り返されることにより,視覚と平衡感覚がズレて生じた自律神経の病的な状態のことである.これが生じてしまうと顕微鏡治療はおろか,肉眼治療もできなくなってしまう.さらには精神的なトラウマとして残り,顕微鏡を治療に導入することを諦めてしまうことにもなりかねない.■なぜ“顕微鏡酔い”になるのか? 顕微鏡を覗きながら鏡体を水平的に動かすと視野全体が動くわけだが,たとえば拡大率が5倍ならばその視野全体が5倍のスピードで動くように見える.治療中は顕微鏡を覗きながら鏡体を動かしてさまざまな方向から治療部位を観察する.この視野移動のスピードに慣れていないと,視覚と平衡感覚のズレが生じて顕微鏡酔いが発症するのだ.■“顕微鏡酔い”にならないためには? 顕微鏡酔いにならないためには,徐々に慣れていくことが肝要である.決して,いきなり顕微鏡を使って治療しないよう.このPart4で解説しているstep by stepに従ってトレーニングしていけば,自ずと顕微鏡下の視野移動に慣れていくので顕微鏡酔いの状態に陥ることはないだろう. それでも顕微鏡酔いになってしまうようだったら,平衡感覚を鍛えることも早期解決に繋がることがある.たとえば,毎晩,寝る前に布団の上でゴロゴロ回転するといった簡単なトレーニングでも,続けていくことで顕微鏡酔いの克服に繋がる場合がある.視界と体勢が大きく動く状況を再現するわけである.また,両足を縦に並べて立ち,首を左右に傾ける運動も平衡感覚の強化に繋がる.2134視界全体が動くことに慣れるトレーニングPART4使いこなすためのstep by step47

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