根面う蝕の臨床戦略
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巻頭口絵で見る・知る根面う蝕 (監修:高柳篤史・高柳歯科医院)根面う蝕の進行を加速させるのは“唾液分泌低下” 近年、口腔衛生意識の高まりにより、歯科医院で定期的なケアを受けている方が多くなりました。定期的なケアを受けている方では、歯を良好に保たれている方が多いです。しかし、そのような方が体調を崩して入院され、しばらく歯科受診ができず、退院後に久しぶりに受診されたときには口腔内環境が急激に悪化しており、無力な思いをした歯科医療者は少なくないことでしょう。せっかく定期健診を受診され、長期にわたり口腔内を良好な状態に保つことができても、短期間に根面う蝕が多発するなどして、多くの歯を失う引き金になることがあります。 さらに、在宅における口腔管理においても、根面う蝕の多発はもっとも頭を悩ませる課題の1つです。要介護高齢者では、口腔乾燥が認められることが多く、その原因はさまざまあり、唾液緩衝能や再石灰化能などの唾液による歯質の保護力が低下しているために、健常成人に比べてう蝕が発生しやすいです。しかも、要介護高齢者では十分なセルフケアが困難であることが多く、根面う蝕のリスクがきわめて高くなります。  唾液分泌低下などにより、唾液の再石灰化能が低下している場合には、多歯面に根面う蝕が発生し、その進行もきわめて速いため、対応に苦慮します。根面う蝕が進行し、歯肉縁下や歯髄に及ぶと、治療における歯への侵襲が大きくなるだけでなく、咬合力により歯冠が根元から破折するなどすると、急激なQOLの低下を招くおそれがあります。唾液による保護機能の低下/セルフケア不良/口腔周囲筋の機能低下/定期健診中断全身的な疾患による入院○○さん、最近来ませんね。具合でも悪いのかしら。お口の状態が心配です。継続して通っていたのに……定期健診中断後の再来院時定期健診時55歳男性、喫煙者。初診から15年経過の状態。胃がん手術後の来院時(6年後)。根面う蝕が多発。(症例写真は東京都開業・三上直一郎先生のご厚意による)6

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