根面う蝕の臨床戦略
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写真でみる根面う蝕 歯頸部付近の歯根面は無細胞性セメント質に覆われており、う蝕に罹患すると細菌の産生する酸による無機質の脱灰とセメント質シャーピー線維の膨化によりセメント質が破壊されます。う蝕はセメント層板やセメント・象牙境に沿って拡大し、急速にセメント質を崩壊脱落させ象牙質を広く露出させます。歯頸部付近は食物残渣や歯周炎による炎症性浸出物などの不潔性沈着物やプラークが多く存在するので、露出した象牙質は無機質の脱灰と有機質の破壊を起こし、う蝕が拡大していきます(図1)。 一方、根面が露出していても歯石が形成されるような口腔環境下ではセメント質の急速な脱灰は起こらず、むしろセメント質表面の石灰化度が上昇し、歯石やプラークとともに長期間残存することもしばしばあります(図2)。また、若年者では歯肉縁付近のエナメル質表層からう蝕が起こることも多く「歯頸部う蝕」とも呼ばれます。図1 下顎切歯部の根面う蝕(研磨標本)歯肉が著しく退縮して歯根の広い範囲が露出し、根面う蝕に罹患している。根尖寄りのセメント質はまだ残存しているが、歯頸部付近ではエナメル質も剥離しており、歯頸部付近を初発とするう蝕が拡大したものと考えられる。図2 臼歯部の歯肉縁下(脱灰標本)歯肉縁頂はエナメル・セメント境より下方に位置し、露出したセメント質表面に不潔物が沈着している。しかし、セメント質には脱灰などのう蝕性変化はみられない。セメント質不潔性沈着物根面う蝕の進行1根面う蝕の大部分は、歯肉の退縮により露出したセメント質に初発します。まずは、どのように進行していくのかみていきましょう。根面う蝕の組織学と病変の進行メカニズム154

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