根面う蝕の臨床戦略
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〝ビジュアルでみる〞根面う蝕の組織学と病変の進行メカニズムPART5写真でみる歯頸部う蝕発症プロセス 図3に、歯頸部に発現したう蝕の進行過程を示します。 初発段階では歯頸部のエナメル・セメント境付近に不潔性沈着物がみられ、エナメル質はう蝕に罹患し、着色層と透明層が形成されています。セメント質部分では歯軸に垂直な方向に線状の着色がみられますが、これはセメント質シャーピー線維に沿って感染が進んだことを示しています。またセメント・象牙境にも着色がみられ、う蝕が境界に沿って拡大していくことを表わしています。感染したセメント質に接する象牙質には薄く着色した部分がみられ、初期のう蝕に罹患していることがわかります(図3-a)。 う蝕が進行すると、エナメル・セメント境付近からエナメル質とセメント質は剥離脱落し、象牙質が露出します。露出象牙質の表層付近は茶色ないし黄色に着色し、着色層を形成していますが、透明層や不透明層はまだみられません(図3-b)。 う蝕がさらに進行すると、組織の境界面に沿って拡大するう蝕により、広範囲にエナメル質とセメント質が剥離脱落し、象牙質が露出します。露出した象牙質には浅い皿型の実質欠損がみられ、表層付近は強く着色し、それより深層では明るくみえる透明層が形成されています。欠損部に対応した象牙細管は、歯髄寄りの部分で細管が黒く見える不透明層を形成しています。また象牙質は歯髄腔にやや突出し、第三象牙質の形成が認められます(図3-c)。図3 歯頸部う蝕の進行(研磨標本)う蝕の初発段階では歯頸部のエナメル・セメント境を中心に不潔性沈着物がみられ、セメント質シャーピー線維に沿って感染が進行しているが、象牙質は露出していない(図3-a)。う蝕が進行すると、セメント質が剥離して表層付近が茶色に着色した象牙質が露出している(図3-b)。う蝕がさらに進行すると、露出した象牙質には浅い皿型の実質欠損がみられ、表層付近は強く着色し、下層に透明層や不透明層が認められる(図3-c)。図3-a図3-b図3-cセメント質エナメル質歯髄象牙質根面う蝕の組織学と病変の進行メカニズム255

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