根面う蝕の臨床戦略
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修復材料の選択と治療法1修復材の要件 根面う蝕に対する治療法に関しては、本疾患が歯冠部に生じたう蝕とは異なる特性を有していることから、歯冠部に生じたう蝕とは異なる考慮事項があります。また、近年の歯質接着に関する材料および被着体である歯質に関する知識の蓄積によって、少ステップであるにもかかわらず高い接着強さと優れた封鎖性を示す製品が開発されています。さらに、機能性を発揮する修復材も市販されています。まずは、どんな修復材がよいかみていきましょう。ここでは、根面う蝕の修復処置に関して、材料選択における考え方とともに、その臨床使用の勘所について考えます。 根面う蝕病巣は歯頸部に沿って環状に進行し、また病巣が除去された窩洞は、そのほとんどが象牙質で占められています。象牙質は歯髄組織と複合体を形成し、う蝕をはじめとする外来刺激に対して生活反応を生じ、細管内へのリン酸カルシウム結晶の沈着などの構造変化を示します。したがって、修復材はう蝕反応象牙質を含む複雑な被着歯面に対して接着するとともに長期的に良好な封鎖性が求められます。修復材の要件❶ 接着性と長期的封鎖性に優れた材料修復材の要件❷ 短時間で操作が完了できる材料 充填される部位が、充填操作が難しく歯肉溝浸出液あるいは血液の汚染を受けやすい歯頸部であることから、これらの影響を避けるためにも充填操作が比較的短時間で終了する修復システムが求められます。修復材の要件❸ う蝕予防が付加された材料 歯頸部あるいは隣接面という不潔域が修復部位となることから、抗う蝕作用あるいは抗菌性などの付加的な機能も望まれます。修復材の要件❹ 色調適合性に優れた材料 歯冠色を有するとともに色調適合性に優れることはもちろんですが、症例によっては歯肉色を有していることも望まれます。以上の観点からグラスアイオノマーセメント光重合型レジン望ましい修復材は……根面う蝕の治療180

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