ザ・クリニカルクエスチョン
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時代のパラダイムシフト 骨結合型インプラント治療が一般的に導入し始められた1980~1990年代初頭のインプラント治療は、いわゆる外科主導型であり、オッセオインテグレーションを確実に得るために、骨量があり骨質が良い部位に埋入することを推奨していた。つまりフラップ弁を大きく開いて、しっかり顎骨を可能な限り明示させ、目視下で確実に手術を行うことが一般的であった。その後、骨造成テクニックが一般的となり、CTが普及するにつれ、既存の骨形態に捉われる必要性が低くなり、また精度の高い事前診断を行うことが可能となり、最終補綴を考慮した補綴主導型のインプラント治療へと移行した1)。そして2000年代に入り、う蝕管理の概念であるMinimal interventionが広まることにより2)、歯科医療全体においてパラダイムシフトともいうべき変化が生じた。それまでの侵襲が大きい治療から、患者視点から見た理想的な治療、低侵襲、治療期間短縮化、かつ長期的な成功を実現できる患者主導治療が求められる時代に突入した。低侵襲、治療期間短縮化への試み 2000年代に入り、患者主導型のインプラント治療は、低侵襲、治療期間短縮がキーワードとして、数々の挑戦的な報告が多くみられるようになり、また同時に、問題も報告されるようになった。その時期に、日本では重大な事故が重なった影響もあり、不確定要素の大きい治療は避けるべきという意見が根強い。 患者と直に向き合う臨床医としては、常に患者の利益向上のために、安心安全かつ低侵襲化・期間短縮が可能なインプラント治療を目指したいところであるが、コンセンサスがなく術者の経験則や技量に基づいて選択されているのが実際であり、治療選択において常に葛藤を感じるところである。抜歯後即時埋入の予知性 日常臨床で多く遭遇する治療選択のひとつに、抜歯後即時埋入がある。フラップレスかつ抜歯窩・創傷治癒とオッセオインテグレーション獲得が同時に行え、低侵襲・期間短縮を目指す治療には欠かせない選択肢である。CQ.A.0606すべての症例に長期的な予知性があるとはいえず、適した術式選択をすべきである結論 短期的な審美性の獲得は可能であるが、長期的な安定性については結論が出ていない。また、待時と比較して問題が起こりやすいことも示唆されている。年代により抜歯後即時埋入への考えは変化していると思われ、治療意志決定の参考文献は時代背景を考慮したうえで選択すべきと考える。即時埋入に予知性はあるのか?図1 ヘンメルとユングの分類 Class1~3。抜歯窩骨形態はさまざまである。(一般社団法人日本インプラント臨床研究会(編). インプラントのための重要12キーワード・ベスト240論文. 東京:クインテッセンス出版,2014.)講演や雑誌でよく見る、あの分Class 0:歯冠部位に最小の欠損しかなく、骨構造にほとんど変化がない。Class Ⅰ:無傷な骨壁をもつ抜歯窩。2HämmerleとJungの分出典  Hämmerle CH, Jung RE. Bone augmentation by means of barrier membranes. Periodontol 2Merli M. Implant therapy: the integrated treatment plan. Chicago:Quintessence Publishing CoHämmerle(ヘンメル)とJung(ユング)の分類。Class0ClassⅠClassⅡClassⅢClassⅣ37

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