ザ・クリニカルクエスチョン
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リッジプリザベーションとは リッジプリザベーションとは、抜歯後の歯槽骨の吸収を防ぎ、歯槽堤の幅と高さを維持するために抜歯と同時に行う、歯槽堤の保護を目的とした処置である。ソケットプリザベーションともいわれる。その歴史的背景としては以下のとおりである。 1985年、人工骨を抜歯窩に入れることにより、抜歯窩の吸収を極力防ぐことができたと報告される1)。1997年、非吸収性のGBRメンブレンを用いたソケットプリザベーション法の効果が報告される2)。1999年、抜歯窩掻把後、人工骨を入れコラーゲンにて封鎖し、仮歯にて封鎖する方法が報告される3)。2004年、人工骨にコラーゲンの吸収するメンブレン(GBRメンブレン)を併用し、歯肉や仮歯で抜歯窩を閉鎖する方法が報告される4)。 2015年、リッジプリザベーションのシステマティックレビューが報告され、リッジプリザベーションが硬組織に与える影響に関する科学的根拠が示された5)。完全閉鎖創 抜歯窩を周囲軟組織によって完全閉鎖する方法である。歯冠側移動術、側方弁移動術などがある。閉鎖環境であるため、周囲からの感染がない限り良好な骨形成を促進させることができる。しかし歯冠側移動術では、減張切開に伴う歯冠側移動のため付着歯肉の喪失などが起きる。準閉鎖創 抜歯窩周囲の粘膜による閉鎖ではなく、メンブレン、ポンティックなどで意図的に閉鎖する方法である。抜歯窩内には自家骨や代用骨を用いて充填し、その上方、抜歯窩の歯槽頂部にメンブレン等で被覆する。また審美性の回復を求められる前歯部などでは、ポンティックによる閉鎖を行うことも多い。開放創 抜歯窩の創部を被覆しない方法である。抜歯窩には自家骨を充填するというよりはアテロコラーゲンスポンジ(テルプラグ:オリンパステルモバイオマテリアル社)などを填入し、周囲の粘膜を定位縫合する方法で、抜歯窩内のスペースメーキングのみを行うもの。 臨床家が「リッジプリザベーションを行っても、インプラント埋入時に思ったほど骨ができていなかった」という経験から「リッジプリザベーションはやっても無駄なのではないか」という見解を持ってしまうことがあり、本CQではその疑問に対応するべく、いくつかの論文にて検証した。CQ.A.1010リッジプリザベーションによって抜歯窩内の歯槽骨を保つ効果がある結論 抜歯後の骨吸収は、後日インプラントを埋入する上で、骨量の減少や審美的において大きな問題となる。リッジプリザベーションは多くの方法があり、骨保全で有効であるが、あくまで骨造成を主目的としている方法でないことを理解していることが重要である。リッジプリザベーションをやる意味はあるのか?61

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