GP・小児・矯正が共に考える 実践早期治療
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図5a 初診時,14歳9か月,女子.下顎右側歯列を遠心移動して前歯部叢生の治療を非抜歯で行った.図5b 動的治療終了時,17歳9か月.図5c 20歳3か月.捻転していた下顎左側中切歯の唇側歯肉が治療終了後に退縮を生じ,歯肉移植術の適用となった.図5d 25歳6か月.保定治療を継続しており,歯列咬合と歯肉の状態は安定している.▶▶矯正治療後に歯肉退縮を生じた症例abbcdabbcde図6a,b 初診時,31歳5か月,叢生を主訴に受診.唇側転位した下顎左側中切歯はう蝕が歯肉縁下まで達し,歯周炎も認められた.上顎両側・下顎左側第一小臼歯および下顎左側中切歯を抜歯して叢生の改善を行ったが,前歯被蓋がきわめて深く,正中過剰歯の埋伏や左側第二大臼歯の鋏状咬合もあり,長期間を要する治療となった. 図6c,d 動的治療終了時,35歳3か月. 図6e 治療後のデンタルエックス線を比較すると下顎右側中切歯に歯根吸収を認め,歯根が近接し,歯槽骨レベルの低下がみられる.今後も継続的なケアが必須と考えている.abcegbbdfh図7a,b 初診時,7歳9か月,女子.上顎右側中切歯萌出遅延を主訴に受診.上下顎側方拡大により切歯排列余地の獲得を行った. 図7c,d 10歳1か月.上下顎切歯が萌出し,拡大を終了した.拡大期間は1年11か月で下顎乳犬歯間は距離は7.6mm増加した.図7e,f e:10歳10か月,f:12歳3か月時.左右側とも下顎第二乳臼歯脱落後ただちに第一小臼歯を遠心移動した.図7g,h 13歳0か月.1期治療前と同様の歯列弓形態になっているが,両側切歯遠心コンタクト間の距離は治療前と比較して6.2mm大きく,側方拡大の後戻りがあったが叢生は軽度にとどまっている.今後は思春期性の成長発育が収束するのを待って再評価を行い,第三大臼歯を含めて2期治療の必要性を検討する予定である.▶▶矯正治療後に歯根吸収を生じた成人症例▶▶切歯交換期に側方拡大を行って萌出余地を獲得した例③叢生の解消と同時に習癖の改善など機能的な問題に対処できる.④リーウェイスペースの利用によるスペース不足の解消と1歯対2歯の咬合関係への誘導を行いやすい.⑤歯の移動にともなう歯周組織の問題が生じにくい.⑥転位歯による咬合への影響を防ぐ.⑦永久歯が萌出する時期から口腔内環境を整え,う蝕・歯周病の予防に寄与する. 一方,次のような難点も考えられます.①治療後の長期管理が必要である.②叢生の再発,後戻りを生じやすい.1896 叢生の早期治療:その意義と長期経過

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