GP・小児・矯正が共に考える 実践早期治療
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第  章 早期治療をその長期経過症例から考える4 片側性臼歯部交叉咬合の治療時期と方法について,乳歯列の交叉咬合ではまず選択的削合で対応することが推奨され,それでも改善しなければ矯正装置の適用が望ましいと報告されています5.臼歯部交叉咬合の治療では主に上顎の側方拡大が行われます. 混合歯列前期ではクワドヘリックス,拡大床,急速拡大装置は高い成功率を示すものの,どの方法がもっとも有効なのかについては強いエビデンスがないとされています6.したがって各装置の特徴と長所短所を理解して選択することが望まれます(図3)7. 一般的には上顎の発育が見込める混合歯列前期での治療が,拡大効果が得やすいと考えられますが,臨床的には装置の適用条件を満たすことが開始時期の目安となります.骨格性下顎前突にともなう交叉咬合症例では上顎側方拡大と同時に前方牽引装置による上顎近心移動が推奨されており,上顎の成長が旺盛な10歳前後までに治療が開始がされます. 骨格的要因のある臼歯部交叉咬合症例では,成長発育の様相によって交叉咬合が再発する可能性もあります.骨格的な非対称は成長発育とともに増悪する傾向があり,早期治療の有効性とともに,2期治療の可能性を理解してもらうことが大切です(図4). 4. 臼歯部交叉咬合の治療図3a 上顎急速拡大装置.間歇的な強い力により正中口蓋縫合を離開させて拡大する機序をもつ.拡大量が大きく短期間で確実な効果が期待できるが拡大方向が限定される.通常は1日に0.4mmずつ拡大する急速拡大を行うが回転頻度を少なくして用いる場合もある.固定式図3b クワドヘリックス.歯列弓緩徐拡大装置.歯槽性の拡大効果もあり,正中口蓋縫合の離開もあるとされる.拡大方向がある程度調節可能だが舌の違和感が大きい.図3c 拡大床装置.正中部の拡大ネジの回転により歯列に対して間欠的に拡大力が働く.装置のアレンジが豊富で汎用されるが拡大量が少なめで歯軸傾斜を招きやすい.図3d CLEA(クレア).弾性のあるβチタンワイヤーの持続的な拡大力で歯槽性の緩徐拡大を行う.咬合面を被覆するので早期接触を排除して拡大を行うことができるが,側方歯の交換期では維持が難しい.▶▶各種拡大装置の特徴可撤式198

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