研修医・歯科衛生士にこそ読んでもらいたい! 学校では習わなかった義歯と義歯ケアの話
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8Part 1Ⅰ.義歯の需要予測 「8020運動」をご存知ですか? これは平成元年より日本歯科医師会や厚生労働省(旧厚生省)によって推進されている「80歳になっても20本以上の歯を残そう」という運動です.平成28年の歯科疾患実態調査からは8020達成者は51.2%と前回(平成23年)調査時の40.2%,前々回(平成17年)調査時の24.1%から大きく増加し,各年代の20本以上の歯を有する者の割合も調査の年次ごとに増加していることが推計されます(図1-1). 平成23年の同調査から無歯顎者(永久歯が1本もない者)数の推移をみると,75~79歳440名のうち40名,80~84歳225名のうち48名,85歳以上106名のうち36名が無歯顎者で,75歳以上の無歯顎率は18.5%でした. さらに平成23年調査によると85歳以上で片顎も含め全部床義歯を装着しているのは46.3%,部分床義歯を装着している人は46.3%であり,依然として多くの高齢者が義歯を必要としている状態であることがわかります(図1-2). 一方,海外の無歯顎者率の調査には,スウェーデンにおいて1901~1930年の間,70歳の無歯顎率は51%から7%に減少したという報告があります1. また,Müllerら2はヨーロッパ全体における無歯顎者率の調査を行っており,地域差はあるが,どの地域でも無歯顎者率が減少傾向にあることを報告しています.オーストラリアにおいても1979~2000年の間に無歯顎者率が20.5%から8.5%に減少しています3.カナダ,アメリカにおいても1970年から2007年の間に無歯顎者率これからも義歯は必要とされるのですか?QUESTION.1605040302010015〜1920〜2425〜2930〜3435〜3940〜4445〜4950〜5455〜5960〜6465〜6970〜7475〜7980〜8485〜(%)(歳)■ブリッジ■部分床義歯■全部床義歯■インプラント図1-2 平成23年の同調査からは,義歯使用者の割合は減少してはいるが,義歯を装着している人は85歳以上では50%に近い.依然として義歯の需要は大きいと考えられる(厚生労働省資料より転載).100.090.080.070.060.050.040.030.020.010.00.040〜4445〜4950〜5455〜5960〜6465〜6970〜7475〜7980〜8485〜■平成5年(%)(歳)■平成11年■平成17年■平成23年■平成28年図1-1 平成28年の歯科疾患実態調査の結果(歯の状況)である.80歳以上で,歯が20本ある人の割合は,この表をもとに推計されている(厚生労働省資料より転載).

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