研修医・歯科衛生士にこそ読んでもらいたい! 学校では習わなかった義歯と義歯ケアの話
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9Part 1が減少したことが報告されています4. このように世界の各国で歯の欠損は減少する傾向にあるのですが,歯科医療の公的保険による支援の差によって違いがみられています.たとえばOsterbergらは,スウェーデンにおける1975~1997年の歯科状況の変化をもとに2005年,2015年の歯科状況の予測を行い,今後も無歯顎者率の減少が続くと予測しています5.またMojonらは,フィンランド,スウェーデン,イギリスの無歯顎者率を利用し調査を行っており,将来的にヨーロッパの高齢者数は増加するが,全部床義歯の需要は減少していくと予測しています6. 一方で,人口構成や社会保障制度が欧州とは違うアメリカにおいては,無歯顎者率は減少するが,高齢者人口が増加するため,この先20年間において全部床義歯の需要が増加すると予測されていて,引き続き全部床義歯は必要とされ,そのための教育も行うべきであると結論づけられています7. 日本では,歯科医療のほとんどが公的保険でカバーされているため,高齢者においても歯を抜かず口腔機能に参加させる治療方針を採ることが多いと思われます.今後の高齢化と要介護率の増加を考えると,高齢者,とくに在宅歯科診療の患者において義歯と残存歯に関するケアや治療をする機会が増加すると予測されます(図1-3).Ⅱ.高齢者の口腔 口腔の各器官も身体のほかの部分と同様に加齢とともに変化します.口腔粘膜や舌の粘膜は薄くなり,味蕾や痛・圧覚受容器の萎縮喪失,分布頻度の低下による感覚の低下,筋繊維の減少にともなう咀嚼筋や舌の運動能低下が起こります.(単位:万人)■要支援■要支援1■要支援2■要介護1■要介護2■経過的■要介護3■要介護4■要介護5H12・4末H13・4末H14・4末H15・4末H16・4末H17・4末H18・4末H19・4末H20・4末H21・4末H22・4末H24・4末(注2)H23・4末(注1)H25・4末H26・4末H27・4末計543221経過的要介護H12.4‐H27.4の比較3.43倍1.93倍2.01倍2.30倍1.78倍2.79倍要支援要介護1図1-3 平成12年に218万人だった要介護認定者は,平成27年には608万人となった.このうち軽度認定者の数が増加している.この軽度認定者の増加を抑制するために,介護予防事業が始まった.注1:陸前高田市,大槌町,女川町,桑折町,広野町,楢葉町,富岡町,川内村,大熊町,双葉町,浪江町は含まれていない.注2:楢葉町,富岡町,大熊町は含まれていない.(厚生労働省介護保険事業状況報告より転載).図1-4 要介護高齢者の口腔内の状態.多量のプラークが付着したままになっている.臼歯部の咬合支持がなくなり,根面う蝕と歯周病がみられる.義歯は高齢者の喜びとともに

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