研修医・歯科衛生士にこそ読んでもらいたい! 学校では習わなかった義歯と義歯ケアの話
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32Part 1(10.9%)(70.1%)(19.0%)加齢に伴う自立度の変化パターン【男性】-全国高齢者20年の追跡調査-自立手段的日常生活動作に援助が必要基本的&手段的日常生活動作に援助が必要死亡3210年齢63-6566-6869-7172-7475-7778-8081-8384-8687-89Ⅰ.口腔の状態と生存率 1996年に発表された北九州高齢者福祉施設入居者約2,000名に対する追跡研究では,無歯顎で,義歯無装着であった高齢者は,残存歯20本以上の者と比べると,身体的健康状態は10.3倍,精神的健康状態では3.1倍悪化していて,健康悪化に対するリスクが非常に高かったと報告されています1.またイタリアの地域住民を対象とした研究データからは上顎10歯,下顎8歯以上残っている人,それ以下の残存歯でも義歯を装着している人,装着していない人との生存曲線の間には有意な差があったということが報告されています2.さらに40歳以上の宮古島住民の集団を追跡調査したデータからは,80歳以上では,男女とも機能歯数(義歯が入っている場合は歯があるとする)が,10本以上の住民に有意な生存期間の延長が認められました3. つまり歯がない,あるいは歯がなくても義歯を入れている人,義歯を入れてない人では健康上の差があることがはっきりとわかっているのです.Ⅱ.高齢者の自立度変化パターン 図5-1は男女の自立度と年齢の関係を示しています.男性の10%(図5-1aの緑の線)はずっと自立を保ったまま死亡しています.いわゆる「ピンピンコロリ」です.そして,約20%は60歳ぐらいを過ぎた高齢者の領域になったところで脳梗塞などのイベントが発生して介護が必要となり,自立度が低下して死亡します. 残りの70%の高齢者は70代の後半,いわゆる後期高齢者になった時点から徐々に自立度が低下し死亡します.これがいわゆる「フレイル」です. 女性の場合は,10%の「ピンピンコロリ」がありません.90%近くの人が後期高齢者になったあたりから徐々に自立度が低下してきます.残りの10数%は65歳を過ぎたころにイベントが発生し,自立度が低下したまま死亡します4. この図5-1から健康長寿社会を達成するためのポイントがわかります.まずイベントの発生をなくすことです.これはいわゆるメタボ予防ということになります.そオーラルフレイルとは何ですか?QUESTION.5a図5-1a,b 高齢者の自立度の年齢による変化(N=5,715)[秋山弘子.長寿時代の科学と社会の構想.2010;科学.80(1):東京:岩波書店.59-64.より許可を得て転載]4.加齢に伴う自立度の変化パターン【女性】-全国高齢者20年の追跡調査-自立手段的日常生活動作に援助が必要基本的&手段的日常生活動作に援助が必要死亡年齢63-65321066-6869-7172-7475-7778-8081-8384-8687-89(87.9%)(12.1%)b

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