研修医・歯科衛生士にこそ読んでもらいたい! 学校では習わなかった義歯と義歯ケアの話
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47Part 1 実際に,訪問診療の現場では,義歯治療の割合がとても多く,訪問診療で関わる医療や介護,福祉の多職種に基づく高齢者食支援の一部となっています(図7-1参照). とくに,義歯治療は歯科でしか行うことができないため,在宅における義歯治療を適切にかつ安全に行うことが,多職種連携の今こそ求められているのです.3超高齢者の多くは要介護高齢者です 超高齢者の多くは,何らかの全身疾患を有する要介護高齢者です.多くの場合,著しい顎骨吸収や,菲薄な顎堤粘膜,フラビーガムなどの口腔内の器質的問題を持っていて,インプラント治療の適応が困難な状態です. また,舌や口唇,頰など口腔内の運動障害もあり,咀嚼・嚥下の機能的問題が存在するために,咬合の回復がそのまま栄養の経口摂取の確立に繋がりません(図7-2). このような要介護高齢者への義歯治療は,通院患者への義歯治療と基本的な部分は同じだとしても,それなりのコツがあります.とくに,要介護高齢者では,姿勢保持や指示理解などが困難ですし,口や顎を医療者の期待や指示どおりには動かしてくれません. 治療の実施や精度に影響を及ぼす歯科補綴学的なエラーをいかに少なくするか,無駄を省き,労力を集中させ,小さな努力でいかに大きな効果を得るかが重要なのです.また要介護高齢者に対する義歯治療は,咬合の回復・維持・確保のためではなく,食べられるようになるための義歯治療ですから,食事に関連する居住環境やADLなどの生活機能も含めて考慮する必要があります. そのため,要介護高齢者に対する義歯治療を行う際には,医療や介護,福祉の多職種と関わっていくうえでも,まず歯科以外の疾患に対する最低限の理解が重要となるのです(図7-2参照).Ⅱ.歯科医師・歯科衛生士が知っておきたい高齢者の疾患1認知症 認知症は,後天的に認知機能が障害された状態で,加齢にともなって自然に起こる記憶障害とは区別する必要があります.認知症は,主にアルツハイマー型認顎骨吸収・咀嚼・嚥下障害・低栄養高血圧の薬糖尿病の薬骨粗鬆症の薬心臓の薬血管の薬咬合の確立≠経口摂取の確立食事は日常生活のなかで行われる.超高齢者の義歯治療は広い医療と介護,福祉の枠組みで考える.また孤食にならないようにADLなどを含めた考慮が必要.1人だと食が進まないな図7-2 超高齢者の義歯治療には居食の問題や歯科以外の疾患が関わってくる.NURSE歯科でしかできない義歯治療は,訪問治療に関わるほかの医療職からも期待されています!義歯は高齢者の喜びとともに

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