決定版 歯科医院のための感染対策 ヨーロッパ基準のインフェクションコントロール
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10.ルーティンワークの手洗い洗浄 そもそも、汚染器材の洗浄は、用手洗浄でなければならないのでしょうか。これまで、用手洗浄の問題点については、● 飛散により、シンク周辺の作業環境の汚染や作業従事者の曝露の危険性が高い。● PPEで完全防備しなければならず、選任作業従事者を任命しなければならない。● ブラッシングだけでは除去できない場合がある。● 作業従事者間で除去率にばらつきがある。● 厚手のゴム手袋着用により指先の感覚が鈍くなり、除去率が低下する。● 鋭利器材による切創の危険性が高い。などが挙げられています43)。作業時間がかかるわりには、作業従事者による除去率のばらつきや洗浄ミスによって、その後の滅菌工程が無駄になることも懸念されます。また、「滅菌するから、十分な洗浄ができていなくても大丈夫であろう」と考える作業従事者も少なくないと聞きます。未洗浄や洗浄不十分の汚染器材をいくら滅菌しても、滅菌の保証は得られないのです。 ヨーロッパでは、汚染器材の洗浄において用手洗浄は不適切とされ、どのデンタルクリニックでも実践していません。例外なく、ウォッシャーディスインフェクター(WD)による器械洗浄が実践されています44)。汚染物や有機物が強固に付着している器材や熱に弱い器材は、浸漬洗浄や超音波洗浄を併用しています。 設置されているシンクは手指衛生用であり、シンクおよびシンク周辺は一切汚れてはいません(図14)。また、完全防備している作業従事者も存在しません。なぜなら、用手洗浄による汚染の拡大や曝露の心配がないからです。 用手洗浄を止めることで、器材洗浄時の完全防備が不要となります。さらには、器材の落下による穿通を防止する防水加工のシューズを履く必要もありません。 WDによる器械洗浄が、用手洗浄のすべての問題点を解決してくれるのです。ここがヘンだよ!? 日本の院内感染対策問題だらけの用手洗浄に頼り切っているDRナカムラ’s comment用手洗浄しなければ、個人防護具による完全防備は必要ないのです!図14 ドイツ視察時に著者らが目にしたステリライゼーションルームのシンクどのデンタルクリニックのステリライゼーションルームでも用手洗浄は行われてはおらず、そのシンクの用途は手指衛生のみである。29

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