咬合YEARBOOK 2018/2019 咬合と矯正歯科治療
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116別冊 the Quintessence「咬合YEARBOOK 2018/2019」2矯正歯科医の視点からの咬合論:咬合と矯正歯科治療,私はこう考える1.咬合と矯正歯科治療,私の考え 有歯顎の咬合論はhingeaxisを求め,そこをCentricRelation(CR)とし,CRで咬頭嵌合位を与えるというナソロジーの機械的咬合論1,2に始まり,半世紀以上にわたって変遷してきた.現在の歯科臨床においても歯の接触に依存せず,任意の顎間距離に存在する上下顎の位置関係であることから,CRは咬合再構成時の基準位として,その臨床的価値を否定できない. しかし,下顎頭の関節窩内での位置を指標に定義されるCRは,定義そのものが歴史的に紆余曲折しており,1994年のGPT-63以降CRは7つの定義が示されていたが,2017年に改変されたGPT-94では「歯の接触に依存しない上下顎関係であり,下顎頭は関節結節の後斜面に向き合う前上方に位置し,この位置での下顎は回転運動に限定される.緊張がなく生理的な上下顎関係から患者は垂直方向,側方および前方運動を行うことが可能である.臨床的に有用で再現性のある基準位である」とされている.このように,CRは使用する個人の解釈により概念が大きく異なる可能性があるため,注意が必要である. 顎関節は咬合接触とともに下顎位の構成要素であり,その状態により下顎位に変化をもたらす.高い適応能力を示す生体は,その下顎位が関節窩内での下顎頭の位置関係に不調和を生じさせようと,関節周囲軟組織にとって不適切な位置であろうと,これらの不調和を補償してしまう.しかし,許容範囲を超えた不調和や不調和の蓄積は生体に器質的変化をもたらすだけでなく,その後の環境要因の変化にともない急性症状を惹起する可能性を有していることは,顎関節円板障害や変形性顎関節症が顎変形症の後天的要因となることが報告されている5~8ことから明らかである. 矯正歯科治療では,動的治療時に歯の移動による経時的な咬頭干渉が発現する.潜在的に不調和を内包した顎関節を有する患者においては,矯正歯科治MRIを用いた機能的安定位における咬合再構成5渋澤龍之Tatsuyuki Shibusawa東京都開業 渋澤矯正歯科連絡先:〒152‐0035 東京都目黒区自由が丘1‐29‐14 J・frontビル3階

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