咬合YEARBOOK 2018/2019 咬合と矯正歯科治療
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191別冊 the Quintessence「咬合YEARBOOK 2018/2019」変化に寛容な矯正治療の咬合と厳格な補綴治療の咬合の調和を目指して矯正治療における咬合変化に寛容な咬合変化に厳格な咬合補綴治療における咬合咬合は成長・エイジングを通じて顎骨形態・顎間関係・歯周組織・口腔周囲筋に影響を与え,一方で相互に適応変化していくものである.咬合は精密で,厳密な調整を要するものであり,原則できるだけ変化させたくないもの.図1 補綴治療および矯正治療が含まれる包括的歯科治療において長期的に安定した咬合を獲得するためには,上記の相違を十分に理解したうえでの配慮が不可欠であると考えられる.ルに移行する前に確認ができるが,矯正治療ではこういった事前の確認ができない.しかも,治療期間は2~3年に及び,その間に加齢や成長による顎骨形態の変化など,さまざまな変化がともなうため,いっそう複雑になる.そして2点目は,咬合様式の違いである.総義歯の咬合様式では,天然歯の場合と目的は大きく異なり,原則的に粘膜の上に船のように浮かんで吸着してる義歯を咬合咀嚼時にいかにして安定させるかが1つの鍵となると考えられるため,両側性均衡咬合や意図的にアンテリアガイドを避けるような咬合をとる場合がある.一方,矯正治療ならびに天然歯の咬合様式は,固定式の補綴装置と同様にミューチュアリープロテクディッドオクルージョンが原則であると筆者は考えている(ミューチュアリープロテクディッドオクルージョン:前歯と臼歯の役割分担された咬合と考えられ,具体的には垂直力に強い臼歯と側方力に強い前歯部が相互に補完し合う関係がとられた咬合関係)2. いずれにしても,現在筆者が行っている治療は,矯正治療とインプラントを含めた補綴治療が混在しており,矯正専門医として仕事をしていたときに考えていた以上に複雑である.本稿では,筆者の矯正治療と補綴治療の咬合に対する考え方をまとめたいと思う.次項では,考え方の異なる矯正治療と補綴治療の咬合(図1)をいかにハーモナイズすべきかについて述べたいと思う.2. 補綴医もしくは矯正医との 連携時の注意点リアルタイムでのゴールの共有 矯正治療のゴールと補綴治療のゴールは適時リアルタイムでの共有が必要である.筆者の場合,①補綴医と矯正医の両方を兼ねて治療に携わるスタイル,②他の補綴医からの依頼で矯正専門医として携わるスタイル,③矯正専門医からの依頼で補綴医として携わるスタイルの3つの異なるスタイルで日々臨床に携わっている.いずれのスタイルにおいても,もっとも重要なことは治療前に必要な処置(ぺリオ,エンド,プロビジョナルレストレーション)と治療後の補綴デザインを事前に明確にして確認し合い,矯正治療中においても術者全員がつねにそれを認識していることである. さらに付け加えると,矯正治療を前提とした場合矯正治療における咬合と補綴治療における咬合

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