治る歯髄 治らない歯髄 歯髄保存の科学と臨床
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 1章に歯髄の治癒の原則,2章からは治療の順序に従い,各治療ステップの科学と臨床について記載しました.最初から順番に読むと,歯髄保存の科学と臨床を知ることができるようにしました.科学的な内容については,よくある疑問に応えられるように,科学的根拠を示し,よいエビデンスがない場合は,筆者の考えを記載しました.また,その科学的根拠とリンクするような臨床例を示すように心掛けました.本文については平易な言葉で書くことを心掛けましたが,内容を理解する手助けとなるように,図表を多く作成しました.さらに,各章の最後に臨床編として,典型的な症例を例に治療ステップを詳述しました.最初にマニュアル的に治療ステップを見てから,科学編を読み進めてもよいかもしれません.本書の構成表1エビデンスレベル(情報の信頼度)疑問の種類(治療,予後,診断)により必要とされる研究デザインは変わる.また,レベル1がもっとも信頼度が高く,レベル5が低いことを表す.どの治療が有効かを知るためには,ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー,ある治療の予後を知るためには,コホート研究のシステマティックレビュー,診断の精度を知るには,適切な参照基準と盲検化が行われた横断研究のシステマティックレビューとなる.エビデンスレベルの分類はいろいろあるが,ここでは,The Oxford 2011 Levels of Evidenceをもとに,わかりやすさを優先し作成した1.これをすべて理解するには,臨床疫学の知識が必要となるが,本書における目的は,同じ研究でも情報の信頼度が異なることを知ることである.参考文献1. Oxford Centre for Evidence-Based Medicine. http://www.cebm.net/index.aspx?o=5653(2017年11月14日アクセス).2. Fletcher RH,Fletcher SW(著),福井次矢(訳).臨床疫学:EBM実践のための必須知識.東京:メディカル・サイエンス・インターナショナル,2006.診断予後治療情報の信頼度マイクロスコープは技術の壁を越える図1 強拡大視野下で治療を行うことにより,肉眼では知り得なかった世界が見える.テクニカルエラーを大きく減らしてくれるため,技術的な問題による心配がなくなる(LEICA M320,モリタ).005

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