治る歯髄 治らない歯髄 歯髄保存の科学と臨床
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無菌状態のラットを露髄させると,何も貼薬せず,口腔内に露出したままでも,歯髄はデンティンブリッジを形成し,治癒する.つまり,露髄そのものは歯髄壊死の原因ではないことがわかる.また,通常の環境のラットの歯を露髄させると,歯髄壊死が生じる.感染の有無が歯髄の生死を決めることがわかる.(文献1をもとに作図)デンティンブリッジの形成歯髄壊死歯髄の自然治癒ラウンドバーで露髄させるラウンドバーで露髄させる通常の環境のラットの歯無菌環境のラットの歯通常の環境では歯髄壊死無菌環境では歯髄が自然治癒図2感染の有無が歯髄の生死を決めるa:浸潤麻酔,ステントの製作,ラバーダム防湿を行い,断髄を行う.b:覆髄材と化学重合型接着性レジンの2層構造にする.c:破折片の再接着はステントとマトリックスバンドを用いて位置づけを行い,フロータイプのコンポジットレジンで行う.詳しくは文献18を参照されたい.ラバーダム防湿約2mmの浅い断髄破折片コンポジットレジン化学重合型接着性レジン化学重合型接着性レジン水酸化カルシウムセメントまたはMTA(変色しないタイプ)水酸化カルシウムセメントまたはMTA(変色しないタイプ)abc図3a~c複雑歯冠破折の治療手順Trauma Guideによる,根完成歯における複雑歯冠破折の歯髄壊死の確率.ピンク色の影の部分は95%信頼区間を示す.10年後の歯髄壊死の確率が,約5%であり,ほとんどの歯髄は治癒することがわかる.筆者の経験でも,脱臼性外傷をともなわない歯冠破折の場合,ほとんど歯髄壊死が生じることなく,予後がよいと感じる.Trauma Guideが示す確率は臨床データに基づいているが,すべてが論文として発表されているものではない.また,外傷の種類によってはデータが不足しているところもある.エビデンスレベルという観点からは「低い」となるが,数字で成功率を知ることのできる,貴重なデータである.(文献2より引用・改変)0123456789101007550250リスク(%)(年)歯髄壊死図3d複雑歯冠破折の予後はよい017歯髄治癒の原則“治る歯髄/治らない歯髄”1 章

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