治る歯髄 治らない歯髄 歯髄保存の科学と臨床
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感染のない歯髄は治癒する②:便宜断髄による歯髄の保存 歯の位置異常の問題で便宜抜髄を行うことがあるが,健全な歯髄は「便宜抜髄」ではなく,「便宜断髄」にて歯髄保存することができる.この症例は,歯周病の問題を解決するために,MTMによる挺出を計画したが,クリアランスの問題で歯髄が露出してしまうため,便宜断髄にて対応した.断髄の位置に注意が必要である.図5a~c 64歳女性,5部の腫脹と違和感を主訴に来院.近心のプロービング深さは9mm.エックス線写真から,近遠心部に垂直性骨欠損を認める.初期治療後に矯正的挺出により骨欠損の改善を計画した.7は歯根破折のため抜歯,6部にインプラントを計画した.図5g 矯正的挺出後,近心の垂直性骨欠損が改善している.図5h 2年後.臨床症状は正常範囲内である.図5i 同エックス線写真.正常範囲内である.a図5d,e 断髄面が歯肉縁下に位置するように,断髄を行った.挺出後のクリアランスを確保することと,根部象牙質が露出することによる象牙細管からのマイクロリーケージを防ぐためである.断髄後,OrthoMTA(BioMTA社,日本未発売)を貼薬し,グラスアイオノマーセメントで仮封した.図5f 断髄後,初期治療と同時に矯正的挺出を行う.5近心に歯石の沈着を認める.debc019歯髄治癒の原則“治る歯髄/治らない歯髄”1 章

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