インプラント治療の説明書と同意書の作り方
6/6

 インプラント治療が完了するまでには、比較的長い期間を要します。そのため、いったん治療を開始したものの、途中で別の医療機関に「転医」をする患者さんも少なくありません。ちなみに、転医をする前に診療をした医療機関は「前医」、転医後に診療をした医療機関は「後医」と呼ばれます。 患者さんが転医をする理由には、さまざまなものがあります。 信頼関係が壊れた原因にも、-❶前医が患者さんの言動を嫌ったケースと、-❷患者さんが診療の内容について不信感を抱いたケースとがあります。 どのような理由であれ、法律的にみると、転医をしてきた患者さんに関しては、次の2点で後医の責任の範囲が不明確になります。 第1は、「因果関係」の有無の点です。転医後に、患者さんに合併症・偶発症や副作用その他の不利益が生じる場合があります。ただ、この場合にも、それが前医が行った医療行為によって生じたものであるケースがあります。このケースであれば、後医は責任を負いません。しかし、このケースであるかどうかは、必ずしも明らかとは言えません。 第2は、「医療ミス」の有無の点です。後医は、前医が行った治療の内容や結果を「引き継ぐ」ことになります。その分、治療にあたってとることのできる「選択肢」が限定されます。言い換えれば、後医は、最初からインプラント治療を行う場合と比べて、「不自由」な状況に置かれることになります。それゆえ、一般的には「医療ミス」と考えられる事態が生じた場合でも、後医としてはやむを得ない「転医」とその原因法律的な問題点─後医の責任の範囲が不明確になる─12インプラント治療に関しては、患者さんの「転医」をめぐるトラブルが少なくありません2宗像 雄(弁護士)「転医」をめぐるトラブルを避けるためにも、「インフォームド・コンセント」が大切です。 転勤や転居といった「外的」な事情 前医と患者さんとの間の信頼関係が壊れたといった  「内的」な事情96患者さんを「クレーマー」にしないための インプラント治療の説明書と同意書の作り方

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る