最新インプラント補綴-デジタルとアナログの融合-
2/6

シンポジウム2歯科治療を成功に導くために木原敏裕 Toshihiro Kihara (奈良県開業)1981年 大阪歯科大学卒業1984年 木原歯科医院日本臨床歯科医学会理事、大阪SJCD研修会代表、OJ特別顧問はじめに 筆者は、インプラント治療を始めて30年になる。当初は骨のある部位だけに埋入していたのが、やがてGBRで骨のない部位にまで埋入するようになり、前歯部の審美性やサイナスにまでアプローチするようになって、現在では欠損部位に対する第一選択はインプラントという風潮になった。骨があり十分な付着歯肉があれば特に問題はないが、そういった条件の揃わない、あるいは咬合に問題のあるケースの場合はやはり長期的にみて問題が出やすいと思われる。そこで、本稿では歯科治療を行う際に何を考えておかなければならないのか、そして臨床の中で長期症例を通じて何を学んだのか、これから気をつけることはどういうことなのかを述べてみたい。歯科治療を成功に導くために まずは正常像を理解することが重要である。われわれ歯科医師は病的な患者ばかりを診ているので、正常な状態を忘れてしまいがちである。項目として、年齢、骨格、歯列、支持組織、歯が挙げられる。以下、各項目を詳しく考察する。年齢 同じようなケースであっても患者の年齢によって治療のオプションは変わってくる。たとえば、図1-a、bは20歳の女性患者で2先欠、2矮小歯、1切端破折という状態だが、このようなケースに対して日本では保険治療の概念が存在するため、隣在歯を削ってブリッジにしたり、根管治療をしてクラウンにしたりという治療があたり前のようになされているが、インプラントや接着のコンセプトが確立している現在では隣在歯を削らないためのインプラント、根管治療をしてエナメル質を削ってしまわないための接着を駆使して患者の将来にとってできるだけ永続性が保てるような環境を整えるのが若年者に対する処置であると考える。 また現在の日本では高齢者が増え、昭和の時代に歯科治療を受けた患者の補綴歯のほとんどが無髄歯になっていることが多い。年齢とともに歯の数が減ってくると患者自身は「できるだけ歯を残して欲しい」という要望が強くなってくる。しかし、インプラントを適切に使えば歯の数が減りながらもより良く噛める状態にすることができるはずである。 図1-c、dの84歳の男性の場合、上下顎にパーシャルデン図1-a~d 患者一人ずつに対して適切な判断ができているか? 20歳の女性(a、b)と84歳の男性(c、d)に行う治療オプションは当然異なる。abcd42

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る