最新インプラント補綴-デジタルとアナログの融合-
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教育講演エビデンス・ベースド・ デジタルデンティストリー ーインプラントナビゲーションシステム、CAD/CAM、口腔内スキャナーの臨床応用ー近藤尚知 Hisatomo Kondo (岩手医科大学)1993年 東京医科歯科大学歯学部卒業2009年 岩手医科大学歯学部口腔インプラント学科准教授2012年 岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座主任教授はじめに 近年「CAD/CAM」、「デジタルデンティストリー」という言葉がしばしば使用されるようになり、歯科医療の現場も大きな変革の時を迎えたように感じる。インプラント治療の診断においては、パノラマX線写真だけで埋入手術の方法とインプラントのサイズを決定していた時代があったことも回想される。10年ほど前には、インプラント治療の診断にはX線CTを活用すべきとされながらも、それがスタンダードであるとは言い難い状況にあった。それが現在では、CTの撮影だけでなく3D画像上で埋入シミュレーションまで行い、それを口腔内で再現するためのサージカルガイドも作製されるようになった。そして、難症例や審美領域におけるインプラント治療を行う際には、補綴装置にまで配慮して、シミュレーション診断を行うのが当然と言われることも少なくない(表1)1)。補綴主導型インプラント治療 補綴主導型インプラント治療のコンセプトは20年前と同様であるが、ITの導入によって革新的な器材が用いられるようになったため、より精度の高い治療が可能となり、患者側からもそれを求められる時代になったと言える。診断のみでなく、シミュレーションしたインプラントの位置を口腔内に再現するためのサージカルガイドを用いる手術法も、すでに一般的なものとなり、国内外各社より、専用の手術キットが提供されている(図1)。さらには、埋入手術の際に、リアルタイムでドリルの方向と先端の位置をモニターできるダイナミック・ナビゲーション・システムも臨床応用されるようになり、より安全なインプラント治療の実施に貢献している(図2)。CAD/CAMテクノロジー 補綴処置に関しては、口腔内スキャナー(IOS)による光学印象の臨床応用が可能となり、補綴装置製作時の模型は3Dプリンタによって造形される時代へと変わりつつある。技工関連では、すでにチタン製のメタルフレームやジルコニア製のアバットメントなどの補綴装置製作にCAD/CAMが応用されており、とりわけ新しい技術ではないが、従来の鋳造による製作方法では困難であったチタンおよびジルコニアは生体親和性が高く、かつ審美的な材料として現在の補綴歯科治療にはなくてはならない材料となっている。CAD/CAMの導入によって、それが可能となった事実は、現在のインプラント治療、審美歯科治療を大きく発展させるターニングポイントにもなっていると確信している。このCAD/CAM関連表1 シミュレーション診断とサージカルガイドの適用1)①想定した位置に、正確にインプラントを埋入したい②骨量が少なく、埋入可能な部位の把握が困難③下顎管の走行と咬合平面が一致しない④上顎洞やオトガイ孔などを避けて傾斜埋入したい⑤狭い中間欠損など歯根が近接している⑥補綴装置と埋入位置との関係を正確に再現したい(前歯部では必須)⑦骨密度を知りたい⑧手術時間を短くしたい⑨ピンポイントで埋入したい⑩患者に対する明確な説明をするのが難しい⑪歯科医師同士、歯科技工士とのコミュニケーションツールとして⑫模型の保管用(省スペース対策)として56

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