最新インプラント補綴-デジタルとアナログの融合-
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会員発表可動粘膜内縦切開を用いた GBRとCTGの併用 ─唇側骨欠損を有する上顎前歯抜歯後即時インプラント埋入─増田英人 Hideto Masuda (大阪府開業)2001年 広島大学歯学部卒業2008年 ますだ歯科医院開業ENの会、CIDはじめに 近年、審美部位への抜歯後即時インプラント埋入については、審美的な結果を得るために必要な条件が整理されてきた。Buserら1)によると、唇側骨にダメージがなく、厚みがあり、なおかつ軟組織も厚いときにはフラップレスにて抜歯後即時インプラント埋入をすることで良好な審美結果が得られるが、逆に唇側骨が薄いもしくは欠損がある場合には、術後の歯肉退縮のリスクが高い2)ことから、抜歯後即時インプラント埋入は推奨されていない。 しかしながらここ数年、唇側骨に裂開状欠損があったとしても良好な結果が得られたという報告がいくつかなされるようになってきた3~5)。Kanは、唇側骨に裂開状骨欠損がある場合に術後の歯肉退縮を起こさないようにするためのポイントとして、フラップレスではなくフラップを剥離すること、骨補填材と吸収性メンブレンを用いてGBR(骨再生誘導法)を行うこと、さらにはCTG(結合組織移植)を行いバイオタイプを変えることを挙げている6)。 インプラントが長期的に安定した審美的結果を維持するためには、十分な厚みの硬・軟組織が必要である。抜歯後即時埋入をしても唇側骨の術後骨吸収は避けられないことに加え、唇側骨に欠損がある場合にはその吸収量も予測できないので、唇側骨外側へオーバーにGBRをすること、さらにインプラント周囲において歯肉の高さを維持するには天然歯以上に厚みが必要であるため、CTGも併用することには妥当性を感じている。そのため現在、唇側骨に欠損がある場合には、抜歯後即時埋入であったとしても全層弁を剥離し、インプラント埋入と同時にGBRとCTGを行っている。可動粘膜内縦切開を用いたGBRおよびCTG ここで、全層弁を剥離するための切開ライン・フラップデザインについて検討してみたい。歯間乳頭温存型の切開・剥離方法(図1)には歯間乳頭が温存でき、GBRもCTGも行いやすいというメリットがある一方で、瘢痕のない審美的な創面を得るのが技術的に難しく、歯頚部歯肉の血流が遮断されることにより予期せぬ歯肉退縮を引き起こす危険も考えられる。しかしながら、大きくフラップを開く(図2)のも侵襲の図1 歯間乳頭温存型の切開・剥離。黄色の点線は切開ラインを、白味がかったエリアは剥離部分を表す。図2 GBRを行う場合に日常臨床で多用する切開・剥離。1268

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