最新インプラント補綴-デジタルとアナログの融合-
5/6

会員発表多数歯欠損に対しインプラントを用い 咬合再構成を行った症例 ─デジタルとアナログの相互補完を中心に─安藤壮吾 Shogo Ando (愛知県開業)2006年 朝日大学歯学部卒業2012年 なみき通り歯科開業JIPI、日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会はじめに 超高齢社会を迎えた日本において、平成28年歯科疾患実態調査では、8020達成者が全体の4割近い数字となっている。その反面、2割近い患者が無歯顎という歯科臨床における現実もあることから、今なお義歯の作製は歯科治療において重要である。多数歯欠損における欠損補綴の種類はさまざまあるが、義歯の沈下による顎堤の吸収などに代表される生物学的代償の抑制、咀嚼能力の回復や違和感の軽減など、インプラントを利用した補綴装置の優位性は非常に高い1~3)。 しかしインプラントの埋入本数や位置についてはいまだ明確なプロトコールがあるわけではなく、しばしば議論の対象となる。2010~2016年のシステマティックレビューを考察してみると、上顎は6本以上の固定式の補綴装置あるいは4本以上の可撤式補綴装置が推奨され、下顎は4本以上での固定式あるいは可撤式補綴装置が推奨されている4~7)。咬合再構成におけるデジタルシミュレーション 無歯顎や多数歯欠損の患者では、顔貌の回復や咬合平面、咬合高径、咀嚼機能の回復など、さまざまなことに配慮して治療計画を立案しなければならない。そこで筆者は、①咬合平面、②咬合高径、③適正な顎位、④アンテリアガイダンス、⑤安定した咬頭嵌合位による咬合再構成の5要素をもとに治療計画を立案している。 しかしながら、治療計画の複雑化にともない、治療期間の長期化や資料採取の頻繁化など、術者側のみならず、患者自身への負担が大きかった。現在では、セファロ、CT、スタディ模型などのデジタルとアナログのマテリアルを融合し、デジタル上で補綴設計、顎位の補正、移動などを行い、そこからインプラントの最終的な埋入ポジションを逆算して決定することにより、治療期間の大幅な短縮や予測したゴールへの到達が可能となった。 そこで今回、BioNa®(和田精密歯研)を用い、デジタルシミュレーションをもとにインプラントを利用した咬合再構成を行い、固定式と可撤式で補綴を行った2ケースを供覧し、デジタルとアナログの相互補完について検証してみたい。症例供覧症例1 患者は64歳の女性。主訴は下顎の前装冠脱離により、下顎の部分床義歯の装着が困難となり来院された。全身的な既往歴は特にはなく、既存の義歯に対するコンプレックスと不快感を訴えていた。治療計画としては、患者が義歯を希望しなかったことや、大幅なGBRを希望しなかったこともあり、上顎はサブストラクチャー付きの固定式。下顎は3─3を保存して臼歯部をインプラントブリッジとする治療計画で進めていくこととなった(図1)。  咬合再構成の5要素をもとに、まずは平均値にてゴシックアーチを作製し、タッピングポイントが安定したところを最終的な咬合高径とし、その位置でCTを撮影し、BioNa®にてデジタルシミュレーションを行った。患者がGBRを希望しなかったことから既存骨にインプラントを埋入することを優先し、インプラントの埋入ポジションをデジタルセットアップ上で決定(図2、3)。上下顎ともに埋入手術を行い、3─3は歯冠長延長術により残存歯の保存を試みた(図4)。98

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る