下野先生に聞いてみた2
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010PART 1 エンドの疑問【くわしい説明とEvidence】作業長の決定と電気的根管長測定器 根管形成では作業長を決める必要があります.作業長とは,根管治療で器具操作を実施する根管の長さのことです.根管治療における根管内器具操作は,根管充填を確実にするために必要です.また,根尖歯周組織の損傷を避け,根管狭窄部(生理的根尖孔,アピカルシート)を破壊しないようにするために作業長を決定します1. 近年は,電気的根管長測定器を使用する方法が一般的ですが,エックス線を用いた作業長決定法も有用とされています2.電気的根管長測定器は,ファイルが根尖部に形成された肉芽組織と接すると,反応してアンダーの表示をすることがしばしばあります.一方,エックス線を用いた作業長決定法の場合,チェアサイドでエックス線撮影ができないと日常的な実施が難しくなるといわれています.それぞれ一長一短ありますので,総合的に判断して根管長を決める必要があると指摘されています2.電気的根管長測定器は,根管長測定器ともルートキャナルメーターともよばれ,口腔粘膜と根管内に挿入した先端とのインピーダンス(交流回路で抵抗の役割をする)値を測定して根管の長さを把握するものです3.根管形成と根管充填 個々の症例を詳細に見ていくと,(a)根管形成と根管充填がアピカルシートに一致している場合,(b)形成と充填がアンダー(充填材の不足)の場合,(c)形成と充填がオーバー(充填材の根尖孔外への溢出)の場合,(d)形成がオーバーで,充填がアピカルシートに一致しているかアンダーの場合,などが想定されます.しかし,根管形成と根管充填の不一致があったとしても,根管形成の範囲を超えて根管充填が行なわれることはありえませんので,問題は充填の不足(アンダー)のみということになります.さらにシンプルに考えると,根管充填後の治癒に影響を与える因子として考慮すべきことは,①根管内の汚染物質・壊死組織が除去されているか,②充填材(ガッタパーチャ,シーラー)が根管壁との間に隙間をつくることなく緊密に充填されていて漏洩が起こらないか,の2点に集約できるでしょう.アンダー根管充填(充填材の不足) アンダー充填では,(a)生活歯髄が残存する場合,(b)歯髄が失活している場合,とで治癒形態が異なります.(a)生活歯髄が残存する場合 麻酔抜髄を行なった後に根尖部に生活歯髄が残存すると,デンティンブリッジが形成されます.根充材としてガッタパーチャを用いても,根尖部に生活歯髄が残っていれば,水酸化カルシウムまたはMTAを用いた生活歯髄切断法における治癒と同じです4,5(図1-1a).根管形成と根管充填がアンダーまたはオーバーのときには,その後の治癒はどうなりますか?askエンド01オーバー・アンダー根充生活歯髄が残存する場合のアンダー充填ではデンティンブリッジが形成されます.一方,歯髄が失活している場合のアンダー充填では,空隙が形成され,再汚染や感染が生じたり,線維化による根尖瘢痕が形成されます.また,オーバー根充では,溢出した充填材は肉芽組織の線維化によって被包されます.answer

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