下野先生に聞いてみた2
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097歯根膜① アンキローシス元の抜歯窩に歯を戻すことになりますが,その場合でも抜歯窩を一層削除することがお薦めです2.なぜアンキローシスは移植のときよりも再植の場合に多くみられるのか? 再植後の癒着が移植の場合より多いのは,歯と骨の距離が近すぎることが一因とされています.歯根膜が完全に残っている場合はこのような心配は無用ですが,抜歯の際に一部の歯根膜が剥脱してしまいます.その歯を同じソケットに再植するのでどうしても歯と骨の距離が近づいてしまうからなのです. 一方,移植の場合は,歯根の形のとおりに人工的な抜歯窩を作ることは不可能ですから,かなり大きめの骨窩洞を形成して移植をすることになりますが,既述したとおり歯に付着した歯根膜の骨形成能によって広すぎたスペースはきれいに埋められます.したがって,歯と骨の間のスペースの確保は重要なポイントと考えられます2,3(図1-1).アンキローシス(骨性癒着)と置換性吸収 歯根膜による結合が失われて,セメント質と歯槽骨が癒合することを「アンキローシス」(骨性癒着)といいます.強い外傷によって歯根膜の最内層およびセメント質が損傷を受けて起こると考えられます. アンキローシスは単にセメント質と歯槽骨が癒合するだけでなく,歯の置換性吸収をも意味しています.つまり,骨のリモデリングに似た「吸収」と「添加」の現象が繰り返し起こるのですが,骨のリモデリングでは「骨吸収」と「骨添加」が繰り返されるのに対し,置換性吸収では「歯の吸収」と「骨添加」が起こります.したがって,歯がどんどん吸収されていきますので,決して良い治癒機転ではありません. アンキローシス(置換性吸収)は再植後約2週間で認められます.置換性吸収には,①永続的置換性吸収と②一図1-2 歯根吸収を示す模式図.歯根吸収には,①表面吸収,②炎症性吸収,③永続的置換性吸収,④一時的置換性吸収,がある.*参考文献5より一部改変①B 表面吸収   (象牙細管は非感染)④一時的置換性吸収③永続的置換性吸収②炎症性吸収①A 表面吸収   (象牙細管は感染)生活歯髄(非汚染)歯髄壊死(汚染)歯髄象牙質セメント質歯根膜歯槽骨

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