これならわかる 少ないバーでできる生活史の支台歯形成法
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24症例1:ポーセレンジャケットクラウンで上下顎前歯部の審美性を回復した症例(テトラサイクリン障害)Ⅰ 主訴:患者は35歳の女性.幼少期にテトラサイクリンの投与によりエナメル質形成不全を起こし,長年前歯部の審美性に悩み,その改善を希望して来院した. 臨床所見:歯の状態は,う蝕が多く,多数歯にわたって修復物が存在していた. 咬合状態に関しては,犬歯誘導されており,早期接触などは認められなかった.歯肉の状況もポケットはすべて3.0 mm以下であり,付着歯肉も下顎犬歯部を除き十分な量であった.  治療方針:主訴については,ポーセレンジャケットクラウンで補綴を行うことで解消できることを説明し同意を得た. このケースの場合,2つ修復方法が考えられた.まず,歯冠部のみをポーセレンジャケットクラウンで補綴を行い,根面はコンポジットレジンを充填して終了する.もう1つは,上顎6前歯すべてをポーセレンジャケットクラウンで被覆して修復を完了する. 筆者はあえて審美性を考慮し,またラウンドバーを使用することで露髄を避けられると確信を得たので, ポーセレンジャケットクラウンを選択した.また将来,下顎犬歯部の付着歯肉が退縮した時は,歯肉移植によりカバーできると考えた. 以下,図2-1-1〜12まで本症例の治療手順を示す.01ChapterPart 02臨床編Ⅰ.症例1図2-1-1 上顎前歯6本をポーセレンジャケットクラウンの形成法で削除した.すべて生活歯である.上顎右側側切歯のように深いう蝕の箇所は歯髄保護のためにカルボン酸セメントで覆罩した.上顎前歯のガイドグルーブ付与は1.8 mm径のラウンドバーを用いた(詳細はChapter01・P13・「C.ポーセレンジャケットクラウン(PJCr)の支台歯形成」の項目および図1-1-18参照)図2-1-2 形成後の舌側面.シャンファー形態のマージンは歯肉縁上に設定した.

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