天野ドクターの歯周病絵本 バイオフィルム公国物語
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解説13第1章細菌たちの住むところ城塞の真ん中にある小高い丘には城がそびえ、「バイオフィルム公国」と書かれた旗がたなびいている。やはりここは国なのだ。 レンガ造りの立派な建物が城をすき間なく囲んでいる。その外側には木造の家屋が並び、城壁の真下には粗末な家がひしめきあっている。住民には身分の差があるのだろうか。 建物をつなぐ道々には、あふれんばかりの人々が行き来している。この国の人口密度は高い。それに空気がとても臭い。 さて、どこから街に入ればいいのだろうか。ひとまず城壁から降りて、街の外を壁づたいに峡谷の奥へと進んだ。すると、どこからか岩に金属を振り下ろすような音が聞こえる。ツルハシの音だ。 たくさんの人々がツルハシとシャベルを手に谷底で採掘をしている。どうやら鉄が目当てのようだ。採掘によって広く深くなった谷底のまわりにはすばやく城壁がつくられ、城塞は巨岩の根元を目指して拡大し続けている。足を踏み入れたのは、この細菌たちの集合体です。 私たち巨大生命体が歯周病になると、歯ぐきから出血します(歯みがきをしたときに気づく人も多いことでしょう)。血液には、バイオフィルム内の細菌の大好物である鉄とたんぱく質が含まれており、細菌はこれらを栄養にして、ますますバイオフィルムを拡大(城塞都市を拡大)し、歯周ポケットを深くしていくのです。イオフィルム」(またはプラーク)とは、細菌のかたまりのことです。健康な歯ぐき(歯肉)は歯とぴったりくっついていますが、歯の根元にバイオフィルムがたまると歯ぐきに炎症が起きて、歯と歯ぐきのあいだに峡谷のようなすき間ができていきます。 このすき間は「歯周ポケット」と呼ばれ、ポケット内の歯の表面には、バイオフィルムがべっとりと付着しています。本書の案内役である旅人が「バ歯周ポケットのなかに存在する歯周病菌たちの国。歯歯ぐき歯を支える骨バイオフィルム歯周ポケット

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