天野ドクターの歯周病絵本 バイオフィルム公国物語
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16多種多様な細菌たちが暮らす公国。「色」で厳密に分けられた住民は、鉄の身分制度のもとに置かれている。人間の世界では民主主義は当たり前だが、公国に民主主義はない。600の民族から成るこの多民族国家では、ひと握りの貴族階級が国を治めており、住民は不平等な環境で暮らしている。 この国は身分制社会だ。主だった住民は血縁と縁戚関係によって6つの部族に分けられ、身分が与えられている。各部族は「コンプレックス」(=複合体)と呼ばれ、それぞれ異なる色の服を身につけている。 赤色の服をまとう住民は「レッドコンプレックス」という貴族階級だ。街の中心の小高い丘にそびえ立つ城に居住し、絶対的な権力で国を支配している(第1話)。 次に身分が高いのが地主階級であ族も強い口臭を放つ。そのにおいは、平時は(住民にしてみれば)ジャコウのように高貴な香りだが、ひとたび敵を前にすると、相手を毒に侵し、からだのたんぱく質を破壊する攻撃手段となる。彼らに集団で襲われれば、他の住民はひとたまりもない。だから逆らえないのだ。るオレンジの一族。その名のとおりオレンジ色の服を着て、城を囲むレンガづくりの屋敷で暮らしている。 残り4つの部族はただの平民で、それぞれブルー、パープル、グリーン、イエローの色を与えられ、部族ごとに区分けされた木造の家に住んでいる。 さらに街の端には、どの部族にも入れてもらえなかった最下層の住民が、廃材でつくった粗末な家をすみかとしている。 レッドコンプレックスには3つの家系がある。いずれ劣らぬ名家で、筆頭貴族はポルフィロモナス・ジンジバリス家(紋章は円筒)。次いで、トレポネーマ・デンティコラ家(紋章はらせん)と、タネレラ・フォーサイシア家(紋章は紡ぼう錘すい)。紋章は部族のいにしえの姿形を模している。 この国では、身分の高い住民ほど発する口臭が強いが、この3家の貴支配階級 レッドコンプレックス第話3レッドコンプレックスオレンジの一族平民最下層民公国の身分制度

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