天野ドクターの歯周病絵本 バイオフィルム公国物語
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解説17第1章細菌たちの住むところおまけに3家は一枚岩である。ジンジバリス家を盟主として互いに強い信頼関係で結ばれ、仲違いや裏切りはありえない。往来を歩く彼らはそれぞれの家の紋章が描かれた赤いマントをまとい、他の住民とは明らかに身分が違うことを見せつけている。道行く人々はひれ伏すばかりだ。 ちなみに、かつてはこの貴族階級にアクチノマイセテムコミタンス家も属していたが、実際には力が貧弱だったことを見透かされ、今では平民に落ちぶれている。 公国の主要産物である鉄は、平民により採掘されている。掘り出された鉄の大半はまずオレンジの一族のもとに集められ、そこからさらにレッドコンプレックスに納められる。「レッド」は血液に含まれる鉄の色。彼らこそが鉄を支配する者なのだ。 鉄はこの国の住民だけでなく、他国の住民にもなくてはならない栄養分だ。上質な鉄を求め多数の商人が公国を訪れるため、国もレッドコンプレックスも大いに栄えている。かどうかの大きな分かれ道になります。 なお、研究が進むと細菌種の位置づけも変わります。かつて20歳代で発症する若年性歯周炎の原因菌とされていたアクチノマイセテムコミタンス菌は、歯周病への関与が低いことがわかり、今ではピラミッドの上層から下層へと配置換えになりました。イオフィルム細菌の世界では、病原性の違いにより悪玉菌と善玉菌がはっきりと区分されていて、これはピラミッドにたとえられます。 最上層は「レッドコンプレックス」と呼ばれる強力な病原性をもつ歯周病菌たち。中層には中等度の歯周病関連菌(オレンジの一族)、最下層には善玉菌と日和見菌(4色の平民)が位置します。お口のなかにレッドコンプレックスがいるかどうかが、歯周病になるバ細菌には病原性によるヒエラルキーが存在する。高低病原性レッドコンプレックスポルフィロモナス・ジンジバリスなど■ アクチノマイセテム  コミタンスなど中等度の歯周病関連菌善玉菌と日和見菌

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