インプラント YEARBOOK2019
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FINESIA®インプラントシステムFINESIA®インプラントシステムClinical Reportデンタルインプラント「FINESIA®」の開発コンセプトとその臨床応用澤瀬 隆(Sawase,Takashi)(長崎大学生命医科学域歯学系口腔インプラント学分野)はじめに 2017年7月に一般上市された京セラインプラントシステムFINESIA®(ファインシア)は,荷重下のインプラント周囲骨の骨質を制御し,インプラントの長期的な安定を図ることを目指して開発された.本稿ではその開発の経緯と理論背景について解説したい. 現在のインプラント治療はBrånemark教授が提唱した“Osseointegration(オッセオインテグレーション)”が基盤となっていることに疑いはない.彼の造語であるオッセオインテグレーションとは,“osseo(骨の)”と“integration(統合)”を組み合わせたものであり, “荷重が加わっているインプラント表面と生体骨組織との構造的かつ機能的結合”と定義されている1).そもそも,インプラント治療は喪失した歯の咀嚼荷重を担うことを第一義とすることから考えると,インプラントおよびそれを支持する骨組織に付加される「荷重」は,インプラント臨床のみならず,インプラント研究でも十分に意識されなければならない.しかしながら,臨床の現場で「荷重」を認識できることは少なく,X線画像から判断する経年的な骨の過形成(図1)や過重負担にともなう骨吸収(図2)の結果で初めて荷重を認識できるに過ぎない.研究レベルにおいても,早期のそして確実なオッセオインテグレーションを目指して,さまざまな表面改質の試みが多く報告されているものの,その研究方法の多くは「荷重」のファクターを加味していない.臨床において,即時荷重,早期荷重などの荷重時期に関する検討や,荷重負担能が危惧されながらも,ナロープラットフォームやショートインプラントの適用がなされているものの,術前のCT画像解析による骨の量的な診断と臨床経験を頼りに行われているのみで,インプラントを介して伝達される荷重が骨組織にどのような影響を与えるのか,その詳細は不明のまま,臨床的に望ましくない結果が出ていないというだけで容認されているように思われる.X線の白黒や骨接触率に代表される量的な評価を超えた,「骨の中身」を知る指標が希求される.インプラント周囲骨の骨質 2000年にNIH(米国国立衛生研究所)は,骨の力学林 美穂(Hayashi,Miho)(福岡県福岡市開業:歯科・林美穂医院)所属・役職長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授,長崎大学病院口腔顎顔面インプラントセンターセンター長所属・役職Women Dentists Club会長8585

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