トラブル事例に学ぶ歯科訪問診療
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 平成26年度厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「歯科診療所における恒常的な医療安全管理の基盤構築に関する研究」において作成されたサンプル事例を一部改変して紹介します。 事例にあるCPSS(cincinnati prehospital stroke scale)とは、脳卒中を判断する際の指標です。顔面下垂・上肢の脱力・言語障害の3つの指標からなり、顔面下垂・上肢の脱力・言語障害のうち1つでも異常がある場合、脳卒中である確率が72%あると言われています。 歯科訪問診療先で今までに問題なかった患者さんが、この事例のような兆候が少しでも認められたら、訪問スタッフの各位がしっかりとした知識を持ち、緊急時には救急搬送を考慮することをつねに念頭においておく必要があります。顔面下垂一側上肢の筋力低下(右腕) [発生日時] 〇〇年3月11日11時ごろ [当事者および関係者] :茶水花子(歯科衛生士、経験および勤務年数2年) :山上天一(歯科医師・院長、経験年数25年、開業年数18年) :丸内桜子(医療事務兼運転手、勤務年数18年) [患者] :清〇ヨ〇(80歳代女性、高血圧症、糖尿病、心房細動などあり、要介護1)事例訪問先にて 清〇さん、今日は歯のお掃除をさせていただきました。お疲れ様でした。いつもありがとう。お昼は食べて大丈夫かしら。(立ち上がろうとするが、座る。)お食べになってくださいね。でも、その後に歯磨きを忘れないでくださいね。いつも夫の面倒を見てくれてありがとう。お大事になさってくださいね。来月またおうかがいしますからね。ありがとう。(立ち上がろうとするが、また座る。)清〇さん、大丈夫ですか。大丈夫。(立ち上がろうとするが、右に傾いて、また座る。)そういえば、清〇さん、顔色が悪いですよ。(顔面蒼白となる。)清〇さん、笑ってみて。(患者の右口角が下がり表情が引きつって見える。)清〇さん、手を挙げてたままにしてみて。(患者の両手を前方に挙げるが、右手がすぐに垂れてしまう。)山上先生、山上先生、大変です! CPSSで右上肢の脱力を認めます!(隣室にて認知症の患者[夫・要介護4]を診察中の歯科医師に大声で叫ぶ。)清〇さん、大丈夫ですか。丸内さん、救急! 119番。大至急お願いします!         患者さんにこんな兆候がみられたら脳卒中かも?各自が適切な対応を!宮本智行6お役立ちコラム61PART2 トラブル予防&発生時のために知っておこう! 29の事例でみる対応法

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