インプラントの迷信と真実
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治療計画外科補綴処置メインテナンスインプラント周囲炎診査・診断【研究の目的】 インプラント機能後12ヵ月の頬側骨の喪失を調べる。【研究デザイン】 前向きコホート研究【介入方法】 24名(47本のインプラント)に対し、フラップレス(16本)“F0”とフラップ手術(1回法19本:“F1”、および2回法12本:“F2”)によるインプラント手術を行う。【評価方法】 機能後12ヵ月後、それぞれの骨喪失を、インプラントショルダー(0mm)、および2mm、4mm、6mm下方の4点で、専用のアナログメジャリングデバイスを用いて計測した。また二次分析として、頬側骨が1mm以上(thickグループ)1mm未満(thinグループ)に分類し、その減少量の差を術式別に検討した。【おもな結果】 0mm、および2mm、4mm、6mmすべての計測ポイントで頬側骨の厚みに減少が認められた。(それぞれ0.26mm、0.36mm、0.35mm、0.27mm減少)。thickグループとthinグループ間の比較をすると、フラップを形成した1回法(F1)では、骨減少量に有意差が認められたが、フラップを形成した2回法(F2)とフラップレス(F0)では認められなかった。インプラント周囲の頬側骨の予後。荷重12ヵ月後のフォローアップ研究Merheb J, Vercruyssen M, Coucke W, Beckers L, Teughels W, Quirynen M. The fate of buccal bone around dental implants. A 12-month postloading follow-up study. Clin Oral Implants Res 2017;28(1):103-108. (文献5)【研究の目的】 インプラントの唇側骨の解剖学的形態と軟組織の審美性の関係を調べる。【研究デザイン】 ケースシリーズ【介入方法】 12本の待時負荷の2回法プロトコルで上顎前歯部へインプラントを埋入。【評価方法】 機能後平均8.9年後、CBCTにより頬側骨の厚み、量(0mm、2mm根尖側)、頬側骨のレベル、およびインプラント近遠心部の骨の厚み(0mm、2mm根尖側)とPink Esthetic Score(PES)の相関が評価された。【おもな結果】 頬側骨の骨頂の高さはCBCT上ではインプラントショルダーから平均3.8mm根尖側に位置し、完全に骨に覆われているインプラントはなかった(著者(中居)注:しかしCTでは、0.5mm前後の辺縁骨は描出されていない可能性があることを考慮に入れて解釈しなければならない)。PESはベースラインと再評価時では有意な変化はなかった(9.2→9.7)。PESは直接的にはインプラント近遠心0mm部の歯槽骨の厚みと相関があったものの(0.658、P=−0.02;0.582、P=0.047)、頬側骨の 厚みや量とは相関が認められなかった(r=0.418、−0.018)。上顎切歯部の単独インプラントの頬側骨の三次元的考察と審美的結果Veltri M, Ekestubbe A, Abrahamsson I, Wennström JL. Three-Dimensional buccal bone anatomy and aesthetic out-come of single dental implants replacing maxillary incisors. Clin Oral Implants Res 2016;27(8):956-963. (文献6)表2-8-1 最初の頬側骨の厚みがその後の骨喪失に与える影響骨の厚さグループ比較する評価ポイント差P値Thin-thickF0:フラップレスS - 1Y−0.280.14Thin-thickF1:オープンフラップ・1回法手術S - 1Y−0.920.009Thin-thickF2:オープンフラップ・2回法手術S - 1Y−0.090.89Thin-thickF2:オープンフラップ・2回法手術S - Ab−0.310.23Thin-thickF2:オープンフラップ・2回法手術Ab - 1Y−0.250.15Thin:頬側骨<1mm。thick:頬側骨≦1mm。S:手術。Ab:アバットメント装着。1Y:荷重1年後のフォローアップ。「差」における負の値は、最初に言及した群(Thin)におけるより多くの骨喪失を示す。太字の値は P<0.05を示す。 頬側骨が厚いからといって骨喪失を完全に免れるわけではない。また薄いからといって骨喪失が著しく生じるわけでもなく、フラップによるトラウマなどなど他因子も大きい。これら最近の研究からは、頬側骨の厚みの多少はかならずしも軟組織の審美性に絶対的な影響を与えていない可能性(PESでの評価では)が示唆される。したがって、唇側骨が薄いという因子だけでは審美的な結果に決定的な悪影響をもたらさないのかもしれない。2つの論文から言えること・わかること図2-8-1 CBCTによる骨の厚みの計測距離。近遠心側の骨の厚み頬側骨の厚み0mmレベル2mmレベル53

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